まな板の上の姫とお料理王子
きっ…昨日は危なかった…危うく流されちゃう所だったよ…
しっかりしなきゃ!
そりゃぁいつかは…だけど…
まだ早いよね!うんっ!!
今日…顔合わせ辛いなぁ…でもでも、沖田君はそんな事引きずってないよね!
ちょっと不安だったけど、普通に学校に行って教室に入ると、沖田君が駆け寄ってくる。
「パチ恵ー!お早う。」
「おはよう沖田君、昨日はお疲れさまでした…」
一応…お礼は言わないとね…?
私がそう言うと、ムスッと顔を歪める。
「…違うだろィ…」
「…何が…?」
本当に分からなかったんで聞いてみると、あー、とかうー、とか言って横を向いてしまう。
…何だろ…?
「…やっぱ良い…」
「何?気になるよ…」
私が追求しようとすると、銀八先生が教室に入ってきて聞けなくなってしまう。
…何が違うんだろ…?気になるよ…
その後の休憩時間もその後も。
何かに付け聞き出そうとしたのに、のらりくらりとかわされて結局聞けないまま放課後になってしまった…
「パチ恵ー、帰りやしょー」
「えっ?沖田君部活は?」
「今日は休みでさァ、休み。」
「…本当に…?」
「本当でさァ。信用ねェなァ…」
…だって沖田君だもん…
流石にそれを言ったらスネられそうなんで、言わないでおいた。
あ…土方君も近藤君も帰るみたい…本当に休みなんだ、剣道部…
校門を出ると、沖田君が立ち止まってこくりと首をかしげる。
「パチ恵、今日は買い物有りですかィ?」
「うん、晩ご飯のおかずを買いに行くよ?」
「んじゃ俺も行きまさァ。今日姉ちゃん居ないんで弁当買わなきゃなんないんでィ。コンビニ弁当も飽きたんで、スーパーの弁当にしやす。」
そう言って沖田君がスタスタと大江戸ストア方面に歩きだす。
何弁にしやすかねェ…とか楽しそうだけど…
そんなにお弁当ばっかり食べてるの…?
「私…作ろうか…?」
「マジですかィ!?」
「うん、別にご飯ぐらい…」
「…パチ恵…飯なんざ作れるんですかィ…?俺ァ結構なグルメですぜ?」
ちょっと馬鹿にした感じのニヤニヤ笑いがムカつく…
絶対私は料理出来ないって思ってるよ、この人…
「いっつも作ってるもんっ!ぎゃふんって言っても知らないよ?」
「へー、そりゃ楽しみ。」
あはは、とか笑って私の頭を撫でるけど…全然信用してないよ、この人っ…!
美味しくってビックリしても知らないからね!!
「沖田君、何が食べたい?」
「子羊のグリル赤ワインソースがけ。」
「それどんな料理!?作れる訳無いでしょ!!」
ニヤニヤ笑いながら言ってるんで本気じゃないんだろうけど…
私が料理出来ないと思ってからかってるんだ、絶対!!
「カレーで良いでさ、カレーで。」
「そんなの…誰でも作れるよ…」
「んじゃ、焼き肉。」
「それ、料理じゃないし!!」
「えー?んじゃ、ハンバーグとかオムライスとか?」
「…ちびっこみたい…」
「…刺身。」
「だからっ!ソレじゃ並べるだけじゃない!良いよ、ハンバーグとオムライスね。」
「…無理すんねィ…」
なんか…心なしか顔が青ざめてるんですけど…どんだけ出来ないと思われてるんだろ、私…
「無理してないもんっ!」
スーパーに着いて、すぐに挽肉と卵と野菜と…必要な材料をカゴに詰めて、さくさく買い物を終えて荷物は全部沖田君に持たせる。
そのままの勢いでスタスタとスーパーを出ると、沖田君が呼びとめる。
「パチ恵ん家の買い物は…?」
「あっ!忘れてた…まぁ良いや、今日は有るものでご飯作るよ。」
もう1回中に戻るのが面倒だったんで、家の買い物は早々に諦めた。
多分何か有ったよね…?
そんな事より、今日は沖田君をぎゃふん、って言わせる方が大切だもんっ!
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