洗い物を終えた沖田君が、ペットボトルとお菓子を持って居間に来るけど…
帰る、って言わなきゃ…
「沖田君…私そろそろ帰らなきゃ…今から帰ったら…家のご飯も作れるし…」
私がそろっと言うと、眉毛をしゅん、と下げて沖田君が悲しそうな顔をする…
「そんな…まだ飯食っただけじゃねぇかよ…親父さんゆっくりして来いって言ってたじゃねぇかよぅ…折角来たのに…なんとかなんねぇ…?」
凄く寂しそうな顔をされると…私ももう少し居たくなっちゃうよ…どうしよ…
「…うん…じゃぁ、もう少しだけ…」
私が言うと、ぱあっと花が咲いたような笑顔になる。
うわぁっ…ドッ…ドキドキするよっ…
お菓子喰いねェ、とかジュース飲みねェ、とか勧められてちょっと頂きながら2人でのんびりテレビを見ていると、沖田君がソワソワしてる…何だろ…?
じーっと見てると、ハッと気付いた沖田君が、引きつり笑いを浮かべる…?
「パチ恵、ゲームしやせんか?ゲーム!!」
「うん、良いよ。何のゲーム?」
「格ゲーでさァ!新しく買ったのが有るんでィ…俺に勝てるかィ?」
ふふん、って顔で見下されると、イラッとする…
「勝てるよっ!」
ドスドスと沖田君の部屋に移動すると、ソコはすっごく綺麗に片付いてた…意外…
新しく買ったというゲームは『銀角』のゲームで…
この間から、姉上にずっとやらされてるヤツだ…
「姐さんなら買ってるだろィ?説明は要るか?」
「ううん、要らない。コレ、私結構やりこんでるよ?」
「へぇ。」
ストーリーモードで話が進まない!って戦闘だけやらされたから…
結構勝てるよ?私…
ゲーム機のスイッチを入れると、暫くしてキャラクター選択画面になる。
…私はこの人しか使えないんだよな…
「お、近田さん使いですかィ?沖藤かと思ってやした。」
「なんか…沖藤さんじゃ駄目なんだって…そんな沖田君こそ九八君…?」
九八君は、漫画の中でもそんなに強いキャラじゃないのに…
「ハンデでィ。」
「…ムカつく…絶対勝つんだからっ!」
意気込んで対戦を始めたけど…
九八君使ってるとは思えないくらい強いよ!沖田君…
近田さんの弱点をどんどん付いてくるよっ…九八君ってこんな使い方有ったんだ…
「ああっ!もぅっ!!なんで九八君なのにこんなに強いの!?」
「ぱっつあんは強いんだぜ?」
「もう1回っ!」
「へいへい。」
私、近田さんでストーリーモードクリアしたのにっ!それも難しいモードのヤツ!!
「ほれほれ、こんなんはどうですかィ?」
「やぁっ!そんなトコ狙ってくるのっ…ズルイよっ…!」
九八君のスピードを生かして、大振りな近田さんの隙をついてくる…
振りぬいてる間に隙だらけの脇腹とか狙われてしまうよっ…!
「うーっ…もう1回…して…?」
「良いですぜ?何回でも相手してやらァ。」
又対戦を始めるけど、沖田君上手いよ…
「やぁんっ…又そんなトコに入ってくるぅっ…」
「ここなんて弱いんじゃね?」
「あああっ!そんなトコっ…」
近田さんの弱点ばっかり狙われて、全然よけきれないよぅ…
「やぁんっ…もうだめぇっ…」
ちょっと涙目になってくると、突然九八君の動きが止まる。
なんだろ…?でもチャンス!
その隙をついてワザを決めると、初めて沖田君に勝てた!!
「やったー!勝てた!!でも、どうしたの沖田く…」
不思議に思って隣を見ると、コントローラーを持ったまま、前かがみになった沖田君がフリーズしてる…
「沖田君、どうしたの…?具合悪い…?」
さすさすと背中をさすると、ビクリと大きく跳ねて動き出す。
「…パチ恵…そんな声出すの反則でさァ…」
「へ?声?煩かった…?」
「イヤ、そうじゃなくて…」
沖田君が携帯を取り出して、何か操作して音を出す。
『やぁんっ…もうだめぇっ…』
…私の声…?
「こんな声出されたら…健全な男は色んな事考えて動けなくならァ…」
「へ…?何が…?」
意味が分からなくて首を傾げてると、私に向き直った沖田君に両腕を掴まれる。
何…?怒ってる…?
「こんなエロい声…誘ってんだろ…?」
「そんな事っ…」
ぎゅうと抱きしめられて、ドキドキするけど、私も抱きしめ返す。
暖かい体温が、気持ち良い…
すっと顎を持ち上げられて、キスをされる…優しくそっと触れられると…凄く気持ち良い…
「八恵…好きでさァ…」
「うっ…わっ…私も沖田君が好き…だよ…?」
「…ちゃんと言ってくれィ…」
えっ…?私ちゃんと…
あっ!そうか…!
「私も…総悟君が好きだよ…?」
私がそう言うと、幸せそうににっこり笑って、今度は深く口付けられる…
う…気持ち良いようっ…
ちゅくちゅくと響く水音しか耳に入らなくなって、頭がぼぅっとしてくる…
舌を絡められて、唇を吸われて…気持ち良くって一生懸命応えて…
ちゅっという音をたてて唇が離れていくのが寂しいなんて…私って…えっちなのかな…?
「…八恵…我慢できねェ…えっちしてェ…」
怖いくらい真剣な顔で見つめられてそんな事言われたら…
拒否なんて出来ないよ…
「…うん…頑張る…」
泣きそうになりながら、でもちゃんと返事をすると、にこりと笑った総悟君がちゅっと短くキスをくれる。
「俺も頑張りまさァ。」
「え…?…んっ…」
そしてそのまま、私達は…
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