私が家に帰ると、近藤さんとお母さんが楽しそうにお話してた。
本当なら…らぶらぶしたい所なんだろうなぁ…
「お、パチ恵ちゃんおかえり!」
「ただいま…お…近藤さん。」
本当は、お父さん、って呼んでみたいけど…でも、そうしたらお父さんがお父さんじゃなくなりそうで、呼べないまんまで…
近藤さんはパパ、って感じじゃないし…やっぱりお父さん、なんだよな…
それはもう少し考えてみよう。
それより今は…お母さん…許してくれるかなぁ…
「お母さん、私、お父さんの家に引っ越そうと思うの。」
私が思い切ってそう言うと、お母さんと近藤さんがびくってする。
「…パチ恵ちゃん…やっぱり、俺と一緒に住むのは嫌だったかい…?」
近藤さんが、悲しそうな顔でにこりと笑う。
しまった!そんなつもりじゃ…
「そんな事全然無いのっ!私近藤さん大好きだし、本当は一緒に居るの、嬉しいの!だって…おっ…おとーさん…だもんっ!」
私が一生懸命言うと、一瞬ビックリした近藤さんが、ぱぁっ、と音がしそうなぐらいの満面の笑顔になる。
「パチ恵ちゃん…今、お父さんって呼んでくれたかい?」
「…うん…おとーさん…」
「じゃぁ、何も問題ないじゃないか!俺もパチ恵ちゃんが大好きだし…おっと、勿論一番は妙さんだけどね?」
近藤さんがにっこり笑ってお母さんの肩を抱くと、お母さんは真っ赤になってその腕をすり抜ける…やっぱり…
「でも駄目なのっ!私が一緒に居たら、2人ともらぶらぶ出来ないもんっ!!」
私がそう言ったら、2人とも、真っ赤になった。
「イヤ、パチ恵ちゃん…そんなに気を使わなくてもな…?」
「そうよ、らぶらぶなんて…」
2人とも、もじもじと下を向くけど…新婚さんなんだもんっ!
私に気を使ってるもんっ!
「おっ…おとーさんとお母さん、新婚さんなのにっ!私だったら、らぶらぶしたいもんっ!」
私が頑張って言うと、お母さんが優しい笑顔になって私の頭をぽんぽんと撫でる。
「そりゃぁ、お母さんだってイチャイチャしたいけど…でも四六時中はしないわよ?」
「でもでも、それだけじゃないのっ!お父さん1人じゃ寂しいだろうし…」
私が言うと、優しかったお母さんの笑顔が怖くなる。
なっ…お父さん、又何かやったのーっ!?
「はっちゃん、アノ人が寂しい訳無いじゃない。今、息子達と3人暮らしの筈よ?それも、2人ともガラの悪い子達なのよ?駄目ですからね?そんな危険な所に、ウチの可愛いはっちゃんは行かせられません。」
お母さんは、だんだん怖い顔になるけど…でもっ…
「私、お兄ちゃん見てみたいよ…」
「遠くから見るだけで良いでしょ?有名なのよ?喧嘩ばっかりして歩いてるって。確か…高杉晋助と…土方十四郎…」
「トシ!?トシが居るのか!?」
今迄黙って私達の話を聞いててくれた近藤さんが、声を上げる。
「勲さん、お知り合い…?」
「えぇ、昔ウチの道場に通って来ていたヤツなんです。トシが居るなら安心だ。悪い奴からパチ恵ちゃんを守ってくれるぞ?母親が亡くなって、父親に引き取られた、って聞いてたが…そうか、坂本さんだったのか…」
近藤さんが、しみじみと言う。
これだけ太鼓判を押されたら、お母さんだってきっと分かってくれるよねっ!!
「お母さん!おと−さんがこう言うんだもん大丈夫だよ!きっと2人とも良い人だよ!」
私が張り切って言うと、近藤さんも大きく頷く。
「妙さん、トシなら大丈夫ですよ!しっかりしてるし、一本筋の通った真面目なヤツなんです。間違っても実の妹に手を出すようなマネ、アイツはしません。」
「…勲さんがそこまで言うなら…でも、はっちゃん、嫌になったらすぐに帰ってくるのよ?」
「うん!有難うお母さんっ!!」
やった!
これで2人のお邪魔、しなくて済むよっ!
お兄ちゃん達にも早く会ってみたいなっ!私一人っ子だから、兄妹って憧れてたんだー!!
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