※学パロ幼馴染設定
ウソとホントと大切なコト
お隣のそーちゃんとは、生まれた時からの付き合いで。
本当のお兄ちゃんみたいに優しくて、そして意地悪で。
でも、弟みたいに世話が焼ける困った人だ。
そんなそーちゃんは大切で大好きな家族だった筈なのに…最近私はちょっと変だ。
そーちゃんのキレイな顔を見たらどきどきしたり、側によると息苦しくなる。
手を繋いだら、そこから痺れたみたいになるし、頭を撫でられたら、顔じゅうに血が上って来てしまう。
こんなの変だ!何かの病気なのかな…?
そんな風に、私おかしいのに…
「…みー姉ちゃん、そんなの私できないよぅ…」
「大丈夫よ?だってエイプリルフールですもの。」
スッと綺麗な指を立てて微笑む姿は素敵だけれど、なんで私なのかな…
「なんで私なの?妙姉ちゃんでもみー姉ちゃんでもそーちゃんびっくりするよ?」
ちょっとだけ泣きそうになって、お隣のみー姉ちゃんを睨んでみる。
そーちゃんとそっくりな綺麗な顔なのに、みー姉ちゃんだとどきどきしない。
なんでだろ…やっぱり私、おかしいよ。
「そーちゃんはパチ恵ちゃんに弱いんだもの。私や妙ちゃんじゃ言う事聞かないもの。」
「…だもの、じゃないよぅ…」
「あら、じゃぁパチ恵ちゃんはそーちゃんと同じ学校に行けなくなっても良いの?」
「やだ!」
「じゃぁ、ちょっとだけそーちゃんを困らせて改心させましょう?パチ恵ちゃんお願い!」
顔の前に拝むように手を置いてイタズラっぽくウィンクされたら、私は昔から頷くしか出来ない。
とても綺麗で優しいミツバお姉ちゃんは、たまにそーちゃんと同じくらいムチャするって知ってるけど…
でも、大好きだからお願いはついつい聞いてしまう。
「…うん…」
私が頷くと、ミツバお姉ちゃん…みー姉ちゃんはとても嬉しそうに笑った。
だからもう、私は逃げる事なんか出来なくなってしまった…
事の起こりは一か月前。
そーちゃんが、停学になってしまったのだ。
ずっと皆で駄目だよ!って言ってたのに、前の晩に沢山お酒を飲んだまま学校に行ってしまったからで…
すっごくお酒臭かったのに、ここ最近私が変な人に声を掛けられてるから、って心配して一緒に登校してくれて…
普段ならそんな日は休んだり昼から登校したりしてたのに、その日はどうしても一緒に行く、って私に合わせて朝一番で登校してくれて。
だから、すごくお酒臭くて、学校に着いたらすぐに先生に連れて行かれた。
本人は『春休みが長くなりやした』なんて言ってたけど、そんなの絶対良くないよ!
それから皆でまだ未成年なんだからお酒なんか飲んじゃ駄目!ってずっと言っても止めてくれないし。
次に停学になったら、退学にするぞ、って言われても全然止めてくれないし。
だから、みー姉ちゃんと妙姉ちゃんと私が考えて、そーちゃんがお酒を止めるようにお芝居をする事になった。
…なったのは良いんだけど…
私…そーちゃんにそんな事言えるかなぁ…
でも、一緒の学校に行けなくなるのは嫌だし。
私がやるしかないんだよね…
うん…頑張ろう…
そして、計画通りのエイプリルフール。
みー姉ちゃんと妙姉ちゃんの帰りが遅くなる、って事にして私は晩ご飯を作りにそーちゃんの家にやってきている。
「パチ恵ー!ゆっくり作ってて良いぜ?その間俺呑んでるから。」
…又今日もお酒飲もうとしてる…
よっ…よし!今がチャンスだよね!
「私、お酒飲む人嫌いだもん!そーちゃんなんか、だっ…大っ嫌い!!」
一瞬、ぽかん、と私を見たそーちゃんが怖い顔になる。
おっ…怒ったのかな…?
「じゃぁパチ恵んトコの親父さんも嫌いなんだろ?」
「お父さんは大人だもん!そーちゃんなんか子供のくせにお酒飲んで…もう背、伸びないからね!」
「…子供じゃねーし…背だってまだまだこれから伸びるし。」
「とにかく!お酒なんか嫌いだもん!」
そう私が言って睨んだら、そーちゃんがプイッと顔を逸らす。
「…別に…パチ恵に嫌われたって関係ねーし…」
沢山冷蔵庫からお酒を出して、そのままスタスタと居間に行ってしまった。
いつもなら、なんだかんだ言いながら一緒に料理してくれるのに…
嫌われ…ちゃったのかな…?
そう思うと、凄く胸が苦しくなって、涙が出てくる。
でも…私はそーちゃんと一緒の学校行きたいよ…
一緒じゃなきゃ、やだよ…
グスグス言いながらもなんとか晩ご飯を作り終わる。
いつもより随分時間かかっちゃったけど…そーちゃん、ちゃんと待っててくれたのかな…?
そーっと居間を覗いてみると、そーちゃんはいっぱいお酒を飲んでいた。
でも、出かけたりしないでちゃんとご飯待っててくれた。
「そーちゃん…ご飯出来たよ…?」
「…ん…」
ジロリと私を睨んで、すぐにスタスタとキッチンに歩いて行ってしまって。
そのまま無言でご飯を食べて、勝手におかわりしてどんどんご飯を食べ進めていってしまう。
私の分のご飯はよそってくれてるけど、いつもだったら美味しいとか不味いとか何か言ってくれるのに…
それに…又冷蔵庫から出してお酒飲んでるし…
又、ジワリと涙が出てきて、グスグス言いながらなんとかご飯を食べ終わる。
片付けをしようと顔を上げると、そーちゃんは自分の分の茶碗は綺麗に片付けた食卓の向かいで、ジッと私を見ながらお酒を飲んでいた。
「な…何…?」
いつもに無い妙に真剣なまなざしが怖くて、又泣きそうになる。
「…そんなに俺が嫌いですかィ…」
ジッと私を見る目が泣きそうで、これ以上嘘なんか吐けないよ!
「そんな事ないもん…今日はエイプリルフールだもん…」
「嘘吐けんのは午前中だけでさァ。」
急に意地悪な顔になってそんな事言われると、もうちょっと意地悪すれば良かったとか思っちゃうよ!
でも…そんな顔も…なんでかカッコ良く見えてしまう。
なんで…かな…
「そーちゃんの意地悪…」
「…そんな顔するんじゃねェよ…もっとイジメたくなっちまう…」
そっと頬を撫でられると、凄く気持ち良くって思わず擦り寄ってしまう。
やっぱりそーちゃんは優しい…お兄ちゃん…なのかな…
「パチ恵…俺ァ、そんないつまでも優しい幼馴染なんてやってらんねぇんですぜ?判ってやすか…?」
「そーちゃん…?」
「なぁ、俺ァもう結構大人なんですぜ…?」
ガタリと音を立てて立ち上がったそーちゃんの目が怖い…
何…が…?
大股で私の隣まで歩いて来て、肩を掴まれる。
「なぁ、一緒に大人になりやせんか…?…八恵…」
「そーちゃ…」
「総悟、でさァ…」
目の前には、一面綺麗な顔。
唇に、柔らかな…
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