教会に向かうパトカーの中で土方さんに聞かされた仕事の内容は、私が想像していたモノを軽く超えた内容で…私はちょっとだけ地球を見捨ててどこか遠い所に逃げたくなるようなものだった…

「志村にはこれから教会に行って総悟と結婚式を挙げてもらう。それが終わったらすぐに屯所で結婚披露宴だ。まぁ、それは顔だけ出してくれりゃ良い。」

「はい。」

教会かー…ウエディングドレス着れちゃうのは楽しみかも!
それに披露宴にはご馳走出るのかな?銀さんや神楽ちゃんはソレが楽しみなんだろうなぁ…急なのに皆集まってくれるってさっき近藤さんが言ってたし。

「その後二人で新居に移って貰う。屯所の近くに部屋を用意してあるから一ヶ月間そこで生活してくれ。生活必需品やその他は用意してあるんでそれを使ってくれ。」

「はい。」

凄い本格的なんだ…
そうだよね、いくら真選組だからって新婚さんが屯所に住んだりはしないよね。
いっ…一緒に暮らすのか沖田さんと…部屋は…別々なんだよね…?

「それと、毎日大江戸ストアに買い物に行ってくれ。そこに山崎を行かせるんで連絡はその時に纏めてする。」

「大江戸ストアですか…タイムセールの時間でいいですか?」

「構わん。」

沖田さんと同居して家事をして買い物に行って…生活する場所がちょっと変わるだけで、やる事はいつものまんまなんだ。
そんなのであんな大金貰って良いのかな…?

「…あー…その部屋にはだな…監視カメラと盗聴器が設置されてる。」

「あぁ、監視カメラと盗聴器………えぇぇっ!?」

「ヌメール星の姫さんが直接見たいんだと、『幸せな新婚生活』ってのが。一応風呂場と手洗いと寝室には付けないように交渉してあるから安心しろ。その代わりそれ以外の部屋では精々新婚らしくしてくれ。」

苦虫を噛み潰したような土方さんの表情から察するに、それはやっぱり…沖田さんとイチャイチャしろ、って事…?
新婚さんコントとかじゃ…ないんだよね…?
そろっと沖田さんを窺うと、全くの無表情で何を考えてるのか分からない。でも、きっとこの人ならキッチリこなすよね…
って事は…私の貞操って…ピンチ…!?さっきは冗談みたいにしてたけど、ちっ…ちゅーとかしなきゃいけないのかな…?私、ふぁーすときすなのに…
あ!だから依頼料高かったのかな!?

「そんなの私っ…!」

「出来なくてもやってくれ、地球を守る為に。それが依頼だ。」

私の台詞を遮って土方さんが念を押す。
そんな…だけど…
絶望的な気持ちで沖田さんを見ると、にっこり笑って私の頬を撫でる。

「大丈夫でさァ、上手く誤魔化しやす。俺に全部任しときなせェ。」

その手の暖かさと笑顔は凄く私を安心させてくれた。
沖田さんって実は頼りになる人だったんだ…いつもサボってばかりでドSでいい加減な人だとばっかり思ってたけど、少し見直したかも。

「分かりました。私に出来る限り頑張ります!」

「宜しく頼みまさァ、奥さん。」

ニコリと微笑む沖田さんの向こうに嫌そうな顔の土方さんが見えるのがちょっと気になるけど、地球の為、それに依頼料の為に出来るだけ頑張ろうと思いました。





凄く高そうで綺麗で可愛いドレスを着せられてばっちりメイクされて、白いタキシードで本当に王子様みたいになった沖田さんと並んで結婚式を挙げる。

結婚式なんて参加した事無かったから知らなかったけど、こんな…皆の前でちゅーするのが誓いの印になるなんて知らなかった…
そりゃぁ土方さんに話を聞いた時に、監視カメラの前でそれっぽくくっついたり…とか覚悟決めたけど!まさかこんな皆の前で、本当にちゅーするなんて思ってもいなかったよぅ…こんなの…恥ずかし過ぎるよ…泣きたい…でもドキドキして心臓が壊れそうで頭がぼーっとして…凄く幸せだって想ってしまって…
そっと横顔を見る度ちゃんと微笑みかけてくれる沖田さんが格好良くて胸が苦しくて…こっ…恋してしまいそう…

イヤイヤしっかり私!
相手はアノ沖田さんだから!!コレは演技だから!!!

でも…沖田さんの唇…柔らかかった………

って何思い出してるの私っ!イヤァァァっ!!心臓が!心臓が!!

…ドSの筈なのに優しくて…気持ち良………

イヤァァァ!私のえっち!!
何想い出してるの!?顔が燃えちゃうよ!!心臓がドキドキしすぎて壊れるゥゥゥ!!!

どんどん恐い考えになりそうで落ち着く為に出来るだけ遠くを見ると、そこにはヌメール星のお姫様が居て…写真で見た時はただまあるいだけだったのに、今は人間の形になって凄く綺麗なドレスに身を包んでて…ガラスのお人形みたいに綺麗で、でも凄く恐い。
お姫様が沖田さんを見て薄いピンク色に染まった後、じっと私を観察するように見てブルーに染まる…分からないけど、なんとなく分かる。
…そうだよね…結婚したいと思った人の結婚式なんて…本当なら見たくなんかないよね…

その目が少しだけ恐くなって、隣にいる沖田さんの腕に掴まると、静かに私の方に寄ってくれる。
なにげなく優しいよ沖田さん…顔に血が上って…って!
普段そんな事しないでしょ絶対!!演技上手いなオイ!無敵か沖田さん!?
騙されちゃダメ!しっかり私!!しっかり私!!!

「どうした?ここでもイチャイチャする設定ですかィ?」

「そうじゃなくて!ヌメール星の人達が見てるから少しはくっついた方が良いかなって…ひゃっ!」

恐いとは言いたくなくて私がもそもそと言い訳をすると、突然沖田さんが私を抱き上げた!

「なっ…なにっ!?」

「この方がそれっぽいだろィ?さ、米だか花だかかけられに行きやすぜ。」

そう言って歩きだした沖田さんが不自然に揺れてる。
…私…重い…!?

「あの!沖田さん降ろして…私重いから…」

「黙って掴まってなせェ。アンタが避けられるようなモンじゃねェ。」

そう言われて良く周りを見ると、何かがポツポツと降ってきてそれに当たった所が溶けて…溶けてる!?
まさかヌメール星の…

「体まで溶けるようなモンじゃなさそうですがねィ…折角のドレスが溶けんのは嫌だろィ?」

にこりと笑ってくれるけど、私は本当にゾッとして身体が勝手にカタカタと震えだした。

「…護ってやるって約束しただろィ?真選組の名にかけてアンタは傷付けさせやせんから。俺達を…俺を信じて下せェ。」

そうか、そんな危険も有ったんだ…
私はこの依頼を甘く考え過ぎていたんだ。ふぁーすときすがどうのなんて事じゃなかったんだ…地球を吸収するって言ってるような天人が、私に何かしてくるって事ぐらいちょっと考えれば分かった筈なのに…命が…危険だったんだ…
でも、もう遅い。もう始まってしまっているから…

「はい。沖田さんを信じます。」

そう返事をして私が沖田さんの首に抱き付くと、わぁっという歓声が上がって私達にお米だか花弁だかが叩きつけられた。
………地味に痛いよ………これは護ってくれないんだ………