風吹き桜育つ。
僕らが望んだ通り、2人は元気にすくすく育って、もう幼稚園に通うようになりました!
ホントに元気で…元気なのは良いんだけど…元気なのは…
イエ、2人とも良い子ですよ?
…基本的には…
可愛いですよ?そりゃぁもう目に入れても痛くないぐらい。可愛くってしゃーないですよ?
近所の子達とも仲良しだし、お父さんお母さんのお手伝いもちゃんとやってくれるし幼稚園でも良い子でやってるし!
…どこで育て方間違えたんだろ…
「しんぱちぃ、たでぇまけえりやした!はらへっちってぃ!おやつおやつー!」
「おかーさんただいまかえりました!」
あ、2人が帰ってきました。
さぁ、忙しくなるぞー…
「はい、お帰りなさい。もぅ、お母さんでしょ?ちゃんと手を洗ってうがいしてくる事!」
「へーい。」
「はい!」
2人が手をつないでとてとてと洗面所に走る。
こういう所は素直なのになぁ…
僕がおやつの用意をしていると、とたとたと小さな足音。
両側からぎゅうっと、小さな手が僕の袴に掴まる。
ふふっ…まだまだ甘えんぼなんだから…
「しんぱちぃー!おなかすいたー!」
「おかーさんきょうのおやつはなんですか?」
「もぅ、新八じゃないでしょ?きょうはねー、ドーナツだよ?」
2人を纏わりつかせたままちゃぶ台まで移動する。
ちゃんとお座りした2人の前に、お皿に取り分けたドーナツと、カップに入れたジュースを置く。
ぱしん、と手を合わせて、いただきまーすと言った2人がドーナツにかぶりつく。
「おかーさんのどーなつだいすきでぃ!」
「だいすきです!」
ニコニコ笑って頬張る姿は可愛いのに…
「こら、お父さんの口マネしちゃダメでしょ?」
「なんででぃ!りっぱなえどべんでぃ!」
「もぅ!何でそういうトコ似ちゃったかなぁ…」
「にてねぇや!あんなくそおやじ!」
「こらっ!クソおやじなんてどこで覚えてきたのっ!」
僕が腰に手を当ててぷぅ、と怒ると、むぅとした顔で僕を見る。
怒った僕を見て、もう1人があわあわと袖を掴む。
「さくらちゃん、おとーさんだよぅ…」
「くそおやじはくそおやじでぃ!ふーきうるさいよ!」
…そう、総悟さんに口調や中身が似ちゃったのが女の子の桜で、大人しくて良い子が男の子の風樹で…
あぁぁぁぁ…女の子なのにどうしよう…
近所の子供と喧嘩してくるのも、イタズラするのも桜の方で…
今から嫁の貰い手が心配だよ…
僕が頭を抱えてると、がらり、と玄関が開く。
「こんにちわ〜、沖田隊長戻ってますか〜?」
あ、山崎さん。
そう言えばおやつの時間なのに総悟さん帰ってきてないなぁ…珍しくちゃんとお仕事してるのかな?
「やまざきー!」
桜が、片手にドーナツ、片手にジュースを持ってとてとてと駆け寄る。
あれ?今日は大人しいな…
「しんぱちのどーなつだぜぃ!いーだろー!すっげおいしいんだぜ?でもやらねー」
山崎さんに見せびらかすように、目の前でドーナツを頬張る…
…そんな事無かった…ほんっと、どーして総悟さんに似ちゃったんだろ…
「こらっ!桜!お行儀悪いよ?そんな事する子にはもうおやつあげないよ?」
僕が怒ると大慌てで僕に駆け寄ってくる。
「ごめんなさいー」
僕の袴にぎゅうっと掴まって、泣きそうな顔で僕を見上げる。
そんな顔されたらもう怒れないよ…
僕がむぅ、としてると、今度は風樹がお皿を持って山崎さんに駆け寄る。
「やまざきさんごめんなさい…ぼくのおやつあげるから、さくらちゃんをゆるして?」
はい、とお皿を差し出すけど、半分泣いちゃってるじゃない…
「や!良いから良いから!!風樹君が食べなよ!俺はお腹一杯だから!!」
山崎さんがおろおろしながら言うと、にっこり笑ってとてとてとちゃぶ台に戻って、ぱくりとドーナツを頬張る。
風樹の後に着いて、山崎さんも茶の間に来る。
僕の隣に立って、はぁ、と溜息をつく。
「いつまで経っても慣れないなぁ…風樹君と桜ちゃん。沖田隊長の顔で中身が新八君と、新八君の顔で中身が沖田隊長なんだもんなぁ…」
あはは…と複雑な顔で笑う。
まぁ…皆に言われる…
「あ!やまざきしんぱちにちかずくなー!!」
おやつを食べ終わった桜が、僕らを見て山崎さんに飛び蹴りをする。
モロに鳩尾に入った山崎さんがばったりと倒れる。
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