サヨナラの時間です



俺が新八の所に通うようになって、いくつかの季節が過ぎた。
あいかわらず新八はかわいくて、ますます好きになっちまう!

早くお嫁さんに来てくれないかな…ウチはいつでも大かんげいなのに…
でも俺はまだまだこどもで、新八にしたやくそくは守れてないしなぁ。
もっと大人になって、かせげるようになったらすぐにプロポーズしに行くんだ!
きゅうりょうの3かげつ分のゆびわを持って、みんなにじまんしながらプロポーズしてやるからな!
だから、もう少しまっててくれよな、新八。



この春から寺子屋に通うようになる新八は、はじめてあった頃に比べるとちょっとだけ大きくなった。
それでもまだまだ俺より小さくて、すっごくかわいいのは変わらない。

それから、俺が大きい新八の所に行く事も今ではほとんどなくなって、ちょっとさみしい感じがする。
でもまぁ、あっちにも俺はいるし、なんからぶらぶだし。
新八はさみしくないかなぁ、と思うとそれでもいいかと思う。
きっと今頃はこどもなんかできて、仲良くやってるに違いない。
なんせ、未来の俺なんだから!そうじゃなくっちゃ許さない。



そんなこと考えながら、もう通いなれた道を歩く。
桜とか咲いてて気持ちいい風が吹いてて、なんかいい感じだ。

新八、入学いわい喜んでくれるかな…?
姉上と2人で、新八ににあうもの選んだから大丈夫だよな…?


新八の家に着くと、いつもみたいにチャイナやタカチンがいた。
それに、今日は見かけないこどもたちもいる。
でもまぁ、そんな事にももうすっかりなれたんで、俺もそのわの中に入っていって新八に声をかけると、いつものかわいい笑顔で俺をむかえてくれる。

「そーくんいらっしゃい!」

「よう、新八ィ!寺子屋入学おめでとー。これ、俺と姉上からのおいわい。」

そう言って、大事に持ってきたものを新八に渡すと、おどろいた顔をした新八が、すぐに笑顔になる。

「ありがとう!だいじにするね!」

さっそくふくろを開けて、中を見た新八がもっとかわいい笑顔を俺に向けてくれる。
もう、かわいすぎてちゅーしたくなる!
でも、姐さんや九ちゃんもいるからここはガマンしなくちゃいけないや。

俺がためいきをついてなんとかガマンしてると、知らない女の子たちがもじもじと寄ってくる。
…新八の寺子屋の友達か…?

「あの…あなたはしんちゃんのおともだちですか…?どこのてらこやにいってるんですか…?キャー!」

…何で叫んだんだろ…?
女の子ってのはよくわからないや。

「俺は道場に通ってるから寺子屋には行ってないぜ。」

近藤さんと姉上が読み書きそろばんも教えてくれるし。
わざわざ寺子屋なんか行くひつようないし。

そう思って俺がじしんまんまんでそう言うと、みんなヒソヒソと何か言ってる…


『おおきいこなのに、てらこやいってないの…?』

『かっこいいのにざんねんだね…』

『びんぼうなんじゃない?』

『どうじょうだって…こわいひとなのかな…?』

『あのこ、しんぱちくんのともだちみたい。しんぱちくんもそうゆうひとなのかな…?』


なんだよ!寺子屋行ってなかったら何か変かよ!?
それに、新八の事悪く言うな!!
ちくしょう…!

「何だよ、もんくあるのか!?」

ヒソヒソ言ってるヤツラをどなりつけるとそいつらが泣きだして、新八が俺をものすごく怒った…なんでだよ…

「ひどいよそーくん!なんでそんな事するの?」

「なんでだよ!?俺がバカにされたんだぜ?新八俺のお嫁さんなのに、何で味方してくれないんだよ!?俺はいつだって新八の味方なのに!」

俺がそう叫ぶと、こんどはみんなが変な顔をする。
なんだ…?

「おとこのこなのに、およめさんなんておかしいよ。」

「おとこのこどうしはけっこんできないんだよ?」

「しんぱちくんもへんなひとなんだ…」

そう言われて、新八がビックリして姐さんを見る。
そんな事無いって言ってやってくれよ!

「そんなことないよね!ぼく、やくそくしたもん!ね?あねうえ?」

「ごめんなさい、新ちゃん…本当は男の子同士は結婚出来ないの…」

え…?
姐さんは俺たちの味方だ、って言ってたのに…何で…

「そんなの!今は出来なくても未来では出来るようになるんだよ!みんな知らないくせに変な事言うな!!」

俺が大きな声でそう言って木刀を振り上げると、みんなが又ビクッとなって、新八が怒った。
何でだよ…新八まで俺の味方じゃないのかよ…?

「そーくんのバカ!うそつき!そんなことするそーくんはきらい!もうおよめさんになんかならない!うちにこないでよ!!」

「なんでだよ!俺悪くないよ!!」

ジッとにらんで新八がぷいっと横を向いちゃった…
こっちを向かせようとしたら、手を叩きおとされる…新八ィ…

「うそなんか言ってないよ…だって俺、大人の新八にあったもん…大人の俺のお嫁さんになってたもん…」

悲しくって泣きそうになるけど、グッとガマンして新八の手をにぎる。
それなのに新八は俺の手から逃げて、俺をにらんでくるよ…

「うそつき!おとなのぼくになんか、あえるわけないのに!そーくんなんかきらい!みんな、あっちいこ!!」

そのままプイッ、と顔をそらして新八はみんなといっしょに家にはいっていった…俺をのこして…
俺…新八にきらわれた…?

「総君ごめんなさいね。でも、もうそろそろ本当の事話さなきゃいけないでしょ…?新ちゃんの機嫌が直ったら教えてあげるから、今日は大人しく帰ってくれる?」

「新八君はきっと恥ずかしかっただけだよ。すぐにまた仲良く出来るよ!」

姐さんと九ちゃんが俺に笑ってなぐさめてくれる。
でも…俺の頭の中は新八にきらわれたんじゃないか、って事でいっぱいで…
フラフラしながらその日は帰るしかなかった。