ずっと神様といっしょ
今晩の買い物を終えて神社に帰り着くと、ふと思いついたように前を歩いていた沖田様が僕を振り返る。
何…?
「新八ィ…好きですぜ?ほんとに本気で。」
柔らかく重なった唇が、ちゅうっと吸われてそっと離される…
「なっ…なっ…なっ…」
「ちゅー…ほんとはきもちぃだろ?」
「何すんだ馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁっ!!」
「好き、って言えよ新八ィ…」
「言うかそんなん!!僕は男だって言ってんだろがぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あーあ、残念。」
緩く笑った沖田様に蹴りを入れようとすると、ひょいっと除けてさっさと家に入っていく。
それを走って追いかけるけど…早いなオイ!
流石神様…って、変な所感心しちゃったよ…
まぁ、どうせいつもみたいに台所でアイス食べて待っててくれるんだよね。
ちゃんと冷蔵庫に荷物入れてくれるのは有難い…結構頼りになる人…だよね…
「もう!沖田さ…」
僕がムスッとしながら台所に行くと、いつもそこに居る筈の沖田様は居なくって、代わりに冷蔵庫を漁る銀さんが居た。
「…おきた…?」
「いえ、あの…ってか銀さん何してるんですか…?」
僕がじろりと睨むと、だらだらと汗を流して後ずさる。
…なんか…いつもの沖田様みたい…でも、あの人ならすぐに僕に触ってきて誤魔化すんだ…
「やっ…や〜、喉乾いちゃって!お茶でも無いかな〜?なんて…」
「…手に持ってるの、アイスですよね…?」
「あっ…あれぇ〜?おかしいな…」
「…まぁ良いですけど…神楽ちゃんにもあげて下さいよ?」
はぁ、と溜息を吐いて冷凍庫からもう1本取り出して銀さんに渡す。
と、ぽんぽんと僕の頭を撫でてくれる。
あ…それは…沖田様がいつも僕にしてくれる…
「新ちゃんあんがと!あいしてるよ〜」
銀さんがそんな事言ってウィンクを残してぺたぺたと立ち去るけど…
頭は暖かくない…それに…心臓も普通だ…
「やっぱ好きなんじゃねーか、俺の事。」
「そ…っんな事無いっ…」
ドキドキと騒ぎ始める心臓を押さえて声のした方に振り向くけど…
そこに居る筈の沖田様は…居ない…
「え…?沖田様…?」
何処かに隠れて僕の反応見てんのかな…?
うん、する。
あの人ならする。
「僕は、沖田様の事なんかぜんっぜん好きじゃありませんから!感謝はしてますけど、そう言う気持ちは有りませんからねっ!」
『そりゃぁ…残念。』
やっぱり…何処かから見てんだよ、あの人っ!
まぁ、ご飯の時間になったら何処かからか顕れるから、その時に文句言えば良いや。
それよりも早く晩ご飯作らないと、神楽ちゃんの機嫌が悪くなって何かしら破壊されるよ!
沖田様が居なくても、あの2人だけでも大騒ぎなんだから、今のうちに体力温存しておこう。
特に気にしないで、僕は晩ご飯の支度を始めた。
でも、社務所を閉めて、銀さんと神楽ちゃんがご飯を食べて家に帰っても、沖田様は顕れなかった。
…何だろ…こんな事無かったよな…?
さっきのアレ…そんなに…?
イヤイヤイヤ!いつもの挨拶みたいなものだったし!!…気になんか…してないよね…?
僕をビックリさせようとしてるんだよね…?
あ、分かった。
後でお風呂に入ってる時に顕れるつもりなんだ。
もう股の間からいきなり顔出されたって、ビックリなんかしないからな!!
そう思って、気を引き締めて湯船につかってても、ゴシゴシと体を洗ってても、シャンプーの時に目を瞑っても、沖田様は顕れなかった。
どうしたんだろ…何か面倒なお願い事でも有ったのかな…それで手間取ってるのかな…?
うん、きっとそうだよね!
久し振りにゆっくりと1人で布団に手を広げる。
あー!こんな広々と布団に寝れるのは久し振りだー!!
今日はゆっくりと眠れるぞ!!
…そう思ったのに、布団の中は凄く寒くて…
僕は久し振りに夜中に目が覚めた。
明日は…沖田様戻って来てるよね…?
いつもみたいに、喧しい1日に…なるよね…?
次の日目覚めても、横には綺麗過ぎる顔は並んでいなくって…
朝ご飯の時間になっても、銀さんと神楽ちゃんがやってくる時間になっても、沖田様は顕れなかった。
…それどころか…2週間経っても3週間経っても沖田様は戻らなくって…
…どうしたんだろ…こんなに沖田様が姿を顕さないなんて今まで無かったよ…?
まさか…なにか事件に巻き込まれてたりとか…
イヤ、無いか。
神様だもんな…
それに、姿は見えないけど、神々しい気配はしている。
でも…沖田様の気配とは…ちょっと違う気がする…それも、度々気配が変わってるような…
あれ…?
そう言えば一番初めに顕れた時、沖田様代わりだって言ってなかったっけ…
確か…近藤様…
姉上の旦那様で、ここの神社の神様で…
まさか…近藤様が帰って来たから…僕…沖田様が見えなく…なった…?
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