総悟君の手を引いて家に帰る。
今僕は恒道館道場じゃなくて、そこから近い一軒家に沖田さんと一緒に住んでいる。
…はい、僕らあのまま結婚しました………
なんだかんだ言っても、最後は皆認めてくれました。今僕は結構幸せです。

家に帰り着いて電話を見ると、留守電に総悟さんからメッセージが入っていた。多摩に出張に行くけれど、明日には必ず帰るから、って。それと…会えなくて寂しい、あっ…愛してる、って………僕が1人でぱたぱたしてると、総悟君が不思議そうな顔でくいくいと袴を引っ張る。

「しんぱちぃ…どうしたの?」

「あっ…ごめんね?ちょっと恥ずかしいメッセージが…」

「ふぅ―ん…」

総悟君がキョロキョロと辺りを見回す。

「しんぱちぃ、ここはどこ?」

「僕の家だよ?」

「でも、道場がないぞ?しんぱちんち、道場じゃなかったっけ?」

総悟君が不思議そうな顔で僕を見る。

「うん、道場は実家に有るんだ。今はここに住んでるんだけど…」

「へぇ―。あっ!こいびととど―せ―してんのか!?」

「ばっ!!!!!」

なっ…何で分かったんだ!?さすが総悟さん…こんなちっちゃい頃からスルドイよ…!!
総悟君がニヤニヤしながら僕を見る。

「おれの姉上ににてるんだよな!どんなひと?会うのたのしみだな―!」

「いっ…いや、今日は出張に言ってるから会えないなぁ…残念だねっ?」

「へぇ―、きゃりあう―まんなんだぁ―。でも、帰ってきたら会えるよね?」

「まっ…まあ…」

総悟さんの事だから、明日中には何が有っても戻ってくるだろうな…姿を見たらすぐに分かるよな…何て説明しよう…総悟君にも総悟さんにもそのまま説明して良いかな…?僕が暫らく考え事をしているうちに、すぅすぅと寝息が聞こえ始めた。
僕が確認すると、ソファの上で総悟君が寝込んでいた。
あぁ、疲れたんだな…ご飯まで暫らく時間有るし、少し寝かせてあげよう。
タオルケットを出してきて、総悟君の上にかける。ゆっくり休んでね…?

う―ん、これからどうしよう…
僕はあっちに1ヶ月ぐらい居たよなぁ…総悟君もそれぐらい帰れないのかなぁ…?それに、僕はあっちではただの迷子扱いだったけど、総悟君は違うよな…僕が知ってるし…近藤さんも気付きそうだ。まぁ、だからと言って騒ぎ立てるような人ではないけれど…一緒に住むとなると、総悟さんには事情説明しなくちゃいけないしな…まぁ、前に僕が過去に行ってしまった時の事は話してあるから、すぐに分かってもらえるか!
周りの人には…総悟さんの親戚の子供、で良いか。
着替えは…うん、僕が子供の頃に着ていた着物を持ってこよう。パンツはどうしよう…確か総悟君はふんどし使ってたっけ…今、ふんどしってあんまり無いよな…パンツで良いかな…?買ってこなくちゃ!

ちょうど寝てるしな…総悟君が寝てる間にもう1回買い物に行ってこよう。…もう暫らく起きないでね…

テーブルの上におやつとメモを残して、僕は慌てて買い物と実家に行った。
下着を買って、実家で僕の子供の頃に着ていた着物を数着引っ張り出してきた。
上手い具合に誰にも掴まる事無く用事だけ済ませられたけど、家に帰る頃には結構遅くなっていた。
…総悟君、まだ寝ててくれてるかな…

カギを開けて家に入ると、何かが僕の足にぶつかってきた。

「なっ…何!?いたっ…」

僕にぶつかって来たものを見ると、小さい男の子で…
あっ!総悟君起きちゃったんだ………

「ごめんね、総悟君…買い物と着替えを取りに行ってたんだ…」

「しんぱちぃ…またいなくなっちゃったかと思ったよぅ…」

 あ…

僕の袴に掴まっていた総悟君を、しゃがみ込んでぎゅうと抱き締める。そうだ、僕は一度この子の前から
消えてるんだ…あの時の総悟君の泣き顔は忘れてないのに…!なのに、又やってしまった…

「ごめんね、ごめんね総悟君っ!僕はどこにも行かないよっ!!今はもうずっと一緒に居るんだよ?ここの家はね、未来の総悟君と僕の家なんだ。僕達結婚したんだよっ?もうずっと一緒だよ、死ぬまで離れないから!!総悟君がイヤだって言っても、僕は離れないからっ…!」

「…みらい…?」

総悟君が不思議そうな顔で僕を見る。
あ…!ついべらべらと全部ばらしてしまった…いいや、もう一気に説明しちゃえ…

「うん、そう未来。ここはね、総悟君が住んでる時代から10年ぐらい先の未来なんだ。僕はここの新八だったんだ。今はね、大きくなった総悟君と結婚して、この家に住んでるんだ。」

「…大きくなったおれ…?」

「そう。総悟君はね、りっぱになって今は近藤さんや土方さんと一緒にお仕事してるんだよ?」

「近藤さんもいるのか!?」

総悟君の顔が、ぱぁっと明るくなる。

「さっき会いに行った黒い服の人達だよ?土方さんと山崎さんと近藤さんに会ったよ?」

2人の名前を出したとたんにうげぇ、って顔をする。

「あいつらも一緒かよぉ―!?」

そんな事言ってるけど、知ってる人の名前を聞いたからか、嬉しそうだ。

「なぁなぁしんぱちぃ、りっぱになったおれにも会えるのか?」

総悟君が目をキラキラさせながら、僕を真っ直ぐ見つめてくる。…期待されてるなぁ…これは……

「そうだねぇ、総悟さんの事だから、さっさと仕事を終わらせて明日には帰って来るんじゃないかな。」

「…総悟さん、って呼ばれてんだ、おれ!なんかふうふっぽいな!!あ!しんぱちといっしょに住んでるきゃりあうーまんがおれか!!しごとのできるおとこになったんだな!おれ!!」

僕はあはは…と笑う。
…出来るかどうかは…総悟君の夢は壊さないでおこう………

晩ご飯は総悟君の好きなオムライスと唐揚げを作ってあげた。
久し振りに総悟君の喜ぶ顔が見れて、僕が幸せな気分になった。
一緒にお風呂に入って、一緒の布団に入って眠った。
知らない所に1人っきりで飛ばされて、不安だったんだろうな…布団に入ってからも総悟君は、ずっとぎゅぅっとしがみついてきていた。夜中に度々目が覚めるのか、びくり、となってはもう一度ぎゅうっとしがみついて来る…僕は総悟君の不安が少しでも飛んでくように、ただ、抱き締めて眠るしかなかった…