少しのつもりで寝た僕が次に目を覚ますと、外はもう真っ暗だった。
枕元を見ると、お重とお妙さんのメモが有った。

『新ちゃんの大好きな卵焼きです。食べて元気になってね。
妙 』

お重を開けてみると、ソコには何か黒い物体が有った。

…卵焼き…?

なんとなく危険な感じがするんで、止めておこう。
はぁ、と溜息をついて、正面を向くと…何か居るっ!?
そこには、黒づくめの服を着た。茶髪の…

「…おきたさん…?」

「新八ィ!?俺が判るんで!?」

おきたさん(多分)が慌てて僕の隣に駆け寄る。

「あ、イエ…昼にあなたの話を聞いていたんで、そうかな、って…」

「…そうですかぃ…」

あからさまにがっくりと項垂れたおきたさんが、僕の手を握って覗き込む。凄く心配そうで…

「体の調子はどうなんでぃ?どっか痛い所は有りやせんか?」

「いえ、体中痛いですけど…打ち身ですから。」

僕が言うと、しょんぼりと小さくなる。

「すいやせん…俺が驚かせたばっかりに…」

おきたさんが、僕が落ちるまでの経緯を話してくれる。
そうか、この人が原因なのは違いないんだ…

「すいやせん…まさかこんな事になるなんて思いもしやせんでした…新八ィ…」

あ…この顔、僕が落ちる時に見た…心配そうで真剣な顔…
なんでだろ…この人を見てると…ドキドキする…

色男はそれだけで人生楽しいんだろうな!男の僕でさえ、こんなドキドキするんだから…

僕がそんな事を考えながら黙りこくってると、おきたさんが僕の顔を覗き込んでくる。
なっ…ちっ…近いよ!!

「新八ィ…どうしやした?」

「あ、すみません…考え事を…ところでおきたさん、僕とあなたは親友か何かだったんですか?話を聞いていると、随分と近しい関係だったみたいですけど…」

僕が尋ねると、一瞬悲しい顔になる。
なんだろう…おきたさんを見てると…胸が苦しくなる…ドキドキして…顔が熱くなる…

「俺達ァ友人なんかじゃありやせんぜ。」

…ずきん…

なんでだろう…凄く悲しい…

「そう…なんですか…じゃぁやっぱり僕の命を狙って…」

「何でそうなるんだィ!?俺が新八を殺す訳無いだろが!!」

おきたさんが僕の手をぎゅうと握って、真剣な目で僕を見る。
友達じゃないなら、何…?

「友達じゃないなら、あなた僕の何なんですかっ!?兄弟じゃあないですよね!親戚か何かですか!?そんな事無いですよね!だって僕、あなたを見てると凄く安心する!!それに、あなたを見てると僕…ドキドキ…!?」

…あ…僕は何を言い出すんだ!?
男の人相手にドキドキするとかそんな事…まるで僕がこの人に恋してるみたいじゃないか!!
そんなのおかしいよ…そんなの…絶対ヒク!…この人に…嫌われたくない…
おかしいよ…こんな…逢ったばっかりなのに…

僕が俯いて色々考えてると、おきたさんがふっ、と笑う気配がする。

「顔、上げてくだせぇ。久し振りに逢えたんだ、もっと良く新八の顔を見せてくだせぇ。」

僕が顔を上げると、すごく優しい笑顔で僕を見るおきたさんと目が合う。
なっ…んて目で見てるんだよ、この人…僕の顔は今真っ赤になってるよ…

「そうですねぃ…忘れちまったんなら、もっかい初めっからやりなおせば良いんですですよねぇ…」

「…何を…」

僕がおきたさんの顔を見上げると、にっこり笑ったおきたさんが、僕に手を差し出す。

「俺ァ沖田総悟。真選組で一番隊隊長をやらせてもらってまさぁ。志村新八君…」

『俺ァ沖田総悟。真選組で一番隊隊長をやらせてもらってまさぁ。志村新八君…』

このセリフ…前にもどこかで…記憶がフラッシュバックする…
おきたさんが真っ直ぐ僕を見る。

「俺ァあんたが好きでさぁ。俺と付き合って下せぇ。」

『俺ァあんたが好きでさぁ。俺と付き合って下せぇ。』

僕は…前にもこの人に、同じセリフを言われた…
僕を見つめるおきたさんの目は真剣で…それでいて優しくて…
恋に落ちない訳が無いよ…

「僕…何も覚えてませんよ…?あなたの事も…あなたとの想い出も…なにもかも…」

「そんなの構やしませんぜ。もう1回、すんげぇ想い出作っていきゃぁ良いんでさぁ。」

にっこり笑って言われたら…もう何も言えない…
おきたさんは友達じゃない、きっと僕の恋人…

「楽しい想い出、いっぱい作りましょうね?」

僕がそう言って笑うと、ぎゅうと抱き締められる。
わ…凄いドキドキする…

「幸せに、しやすから…」

微笑んだおきたさんの綺麗な瞳が、近づいてくる…
あ………