ピンクのバイト
万事屋に、僕指名で依頼が入りました。
勿論依頼者は沖田さんだ…何考えてんだ?アノ人…
何か無茶な事させられるんじゃないかな…?
ちょっと不安になりながらも真選組屯所に行くと、玄関に沖田さんが迎えに出てくれてた。
「沖田さんこんにちわ…依頼って、何ですか…?」
僕がイヤな顔で言っても、沖田さんはニコニコ笑ってる。その上普段着だ。非番なのかな…?
…………デート…?
「良く来たねィ、新八ィ。今日は俺も非番でさぁ。ゆっくりしやしょうぜ?」
そう言った沖田さんは、ニコニコ顔のまま僕の手を引っ張って走る。
アレ…?出かけるんじゃないんだ…
僕が連れて行かれたのは沖田さんの私室のようで、立派だけど、何も無い部屋だった。
「さ、新八ィ、ゆっくりして下せぇ!ほい、座布団座布団。」
唯一置かれたちゃぶ台の前に座布団を敷かれ、ぐいぐい押されて座らされる。
「おっ…沖田さんっ!僕、何の仕事で…」
僕が振り返った時には沖田さんはもう居なくて、バタバタと走る足音だけが聞こえた。
…何なんだよ、もぅ…
僕がキョロキョロと部屋を見回していると、お盆にお茶を乗せて沖田さんが帰ってくる。
「ほい、お茶。まぁまぁくつろいで下せぇ。」
沖田さんが僕の前にお茶を置いて、僕が答える前に又どこかへ行ってしまう…何だろ…?
帰ってきた時にはテレビを持っていて、ちゃぶ台の前に固定して、さっさとDVDと繋いでしまう。
うわ、早いな…
流れてきた映像は、お通ちゃんの新作DVDだった。あ、このライブDVDまだ買ってない!
「さぁさぁ、コレでも見てゆっくりしなせぇ。」
全然僕の話聞く気無いのっ!?
「沖田さんっ!どうしたんですか?いきなりこんな事…っ!」
「イヤね?いつもいつも新八は万事屋でこき使われてやすから、たまにはゆっくりしてもらおうと…」
ちょっとテレた顔で、沖田さんが笑う。
…突然そんな事…言われても………嬉しいよ…
「…ありがとうございます………」
僕が笑うと、沖田さんも笑う
いつも無茶苦茶だけど、たまに優しいなんてズルイよ…
折角なんで、出してくれたお茶を飲む。
あ、おいしい…
「沖田さん、このお茶美味しいですねっ!やっぱり高いお茶なんですか?」
「いや、なんか台所に有った。新八がいつもスーパーで買ってるやつでさぁ。」
「へぇー、じゃあ淹れ方が上手いのかな?」
「てきとーに淹れただけですぜ?」
「えっ…?てきとーに、って…沖田さんが淹れてくれたんですかっ!?コレ…」
「おぅ。なんか食堂のオバちゃん居なかったんでねェ。」
沖田さん…お茶淹れた事なんて無いんじゃないの…?僕の為に色々考えてくれたんだ…
折角僕の為にお通ちゃんのDVDかけてくれてるけど…今はお通ちゃんより、沖田さんを見ていたい…
「ありがとうございます………だいすき………」
僕が嬉しくなって、沖田さんの袖をぎゅっと掴むと、沖田さんが、はぁ、と溜息をつく。
「新八ィ…折角ゆっくり休んで貰おうと思ってんのに何煽ってんでィ…俺ァまだまだ若ェんですぜ?」
「…僕だって若いですよ…?」
そう言って笑うと、ぎゅうと抱きしめられる。
僕がそっと背中に手を回すと、ちょっと離れてじっと僕を見る。
「止めやせんよ?」
困ったように笑う顔が可愛くて…
「構いませんよ?」
僕が言うと、真剣な顔が近付いてくる。
そっとメガネを外されて…
ゆっくり目を閉じる…
沖田さんの吐息をすぐ近くに感じる…
後少し…
ずばん!!!!!
「そ―――ごぉ――――っ!たすけてぇぇぇぇぇぇ――――っ!!」
へっ…?何…!?
僕達が至近距離で見つめ合ってから開いた襖の方を見ると、割烹着を着て三角巾を付けた近藤さんが、顔を真っ赤にしてスマン…と呟いた…
うわっ!みっ…見られたっ?見られたっ!?
「なんですかィ近藤さん、恋人達の逢瀬を邪魔しないで下せぇ。」
沖田さんがぷぅ、と膨れて近藤さんを睨む。
「すっ…スマン総悟…新八君と総悟は恋人同士だったのか…あ、イヤイヤ!食堂のオバちゃん達が皆インフルエンザで倒れてな?今食堂がピンチなんだ!手伝ってくれ!!」
「イヤでさァ。俺ァ今から新八とセッ…」
なっ…何言い出すんだコノ人ォォォォォォォォ!!
僕は慌てて沖田さんの口を塞いで、近藤さんに話しかける。
「こっ…近藤さんっ!皆さんの食事を作れば良いんですか?じゃぁ僕も手伝います!」
「おっ、良いのかい?新八君。助かるよ!」
近藤さんがにっこり笑う。
「はい、構いません。」
「すまんな!バイト代は出すよ!!」
近藤さんが走り出したんで、未だに押さえていたままの沖田さんの口から手を離して僕も後を追う。
そんな僕の後を、沖田さんが追ってくる。
「新八ィ〜、コレじゃぁ俺が依頼までしたイミ無ェや。ゆっくり出来ねェだろィ…」
「良いんですよ、もう十分休みましたもん。」
僕が言っても沖田さんは不機嫌なまんまだったけど、どたどた走っていく近藤さんに大人しくついていく。
食堂に着くと、見知った顔が皆割烹着と三角巾を付けて、ウロウロしていた…
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