騒がしい僕等



近僕の周りが相当騒がしくなった。
真選組の方達が、良く家を訪ねてくるからだ。

…まぁ…原因は分かってるんだけどね…局長たる近藤勲さんがウチの姉上に恋をして、毎日のようにストーキングしてるから…
その局長を、隊長クラスの方達が、ぞろぞろと迎えに来るようになったんで…
一昨日が山崎さんで、昨日は沖田さん、今日あたり土方さんがやってくるんじゃないかと思います。
近藤さんが姉上に殴られて気絶している時は、そのまま回収して行ってくれるんですが、隠れている時はそこいらじゅう探して行かれるんで、すごく大変そうです。

まぁ、沖田さん辺りは近藤さんが居ようが居まいが、ウチでのんびりお茶を飲んでいくんですよね…
色々お話出来て、楽しいんですが…アレってサボリだよなぁ…ちょっとだけ良心が痛みます。
時にはウチの道場で、稽古つけて行ってくれたりもするんだよな…
普段が普段なだけに、凄い人なんだなぁ、って見直しました。
ちょっとドSだけど、なんだかんだ言って優しいし…変なボケに僕がツッコんだ時の嬉しそうな笑顔は、ちょっと可愛いと思う。
あーあ、いつも沖田さんが近藤さんを迎えに来れば良いのに…

…って!何考えてんだ、僕!?
何でそんなに沖田さんが来るの楽しみにしてるんだっ!?
これじゃぁまるで、恋する…
イヤイヤイヤ、ナイナイナイ!!そんな事はっ!!

「おい、メガネ。近藤さん来てるか?」

僕が顔を赤くしてぶんぶんと頭を振っていると、部屋の小窓から声を掛けられる。

あ…やっぱり今日は土方さんか…

って、なにガッカリしてるんだ、僕っ!?
良い事なんだよ!沖田さんが家に来たら、又サボるに決まってるもの!

「オイ…?」

「あっ!すみませんっ!近藤さん、今日はまだ見てませんが…」

「そうか…」

土方さんが、はぁーっ、と溜息をつく。
疲れてるのかな…?

「土方さん、お茶でもどうですか?」

僕がそう言うと、びっくりした顔をして、コクリと頷く。
あぁ、やっぱり疲れてるんだな、土方さん…

居間に入ってきてくれたので、お茶とお茶菓子とマヨネーズを出してみた。
まぁ、普通マヨなんかいらないけど、土方さんだし。もしかしたら、お茶にもマヨ入れるのかなー?と思って…
でも流石に、びっくり顔でマヨを見てるよ…やっぱりお茶は、普通で良かったんだ…あはは、考えすぎたな、僕…

「オイ、メガネ!」

うわっ、ヤバ…怒ったかな…?

「あっ…あはは…すみまっせん!やっぱりお茶にはマヨネーズ入れませんよねー?」

僕がなんとか誤魔化そうと、愛想笑いをしながらマヨを片付けようとすると、土方さんがマヨごと僕の手を掴んだ。
ひぃぃぃぃぃぃぃっ!?そんなに怒る事ぉぉぉぉぉぉぉっ!?

「すっ…すんまっせんすんまっせんすんまっせんっ!!!決してバカにした訳じゃ…」

「メガネ、お前名前なんつった?」

「は!?あ…新八ですが…志村新八です。」

なっ…なんだ?怒ってないのかな…?

「新八!突然だが、俺と結婚してくれ!!」

「…は…?」

ケッコン…?…けっこんって何だ…?………結婚ー!?

「なっ…土方さんイキナリ何言って…っ!?」

「未だかつて、お茶にまでマヨネーズを出してくれたヤツは居ない!お前こそ俺の理想だ!新八、俺と結婚してくれ!頼む!!」

そう言って、土方さんが土下座する…って、土下座ぁっ!?

「ちょっ、土方さん頭を上げて下さい!イイヤイヤイヤ、無理ですからっ!僕、男ですからっ!!」

「でもお前、家事全般が出来るし料理も得意なんだろ?」

「は?そんな事誰が…?」

「いや、総悟が…何だか自慢げにお前の事言ってた…」

「…沖田さんが…僕の事…?」

「おぅ、最近はお前の自慢話しか聞かないな。」

うわっ…どうしよう…何だか嬉しい…顔にメチャクチャ血が上って来ちゃうよ…ヤバい、絶対赤くなってる、僕…

「そんだけ出来りゃぁ別に男でもかまわねえし。子供なんていらねえし、穴は有るから大丈夫だ。」

…今、すっごい事聞いたような…
そろりと顔を上げると、自信満々な顔の土方さん…

「イヤ、ちょっとぉっ!?大丈夫じゃなくてぇぇぇぇぇぇ!!僕の気持ちは…」

「土方さーん、そりゃぁセクハラってぇヤツですぜ?今すぐ切腹しなせぇ、介錯は俺がしやすぜ?」

正座したままの土方さんの首の横に、チャキッ、と音を立てて刀が現れる。
…沖田さんっ!?
まっ…マズイ、更に顔に血が上るぅぅぅぅぅぅ!!!!!

「おっ…沖田さんっ!僕は別に構わないですからっ!家で人殺しは止めて下さいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

僕が慌てて沖田さんの上着のそでを掴んで止めると、複雑な顔をした沖田さんが僕を見る。

「…新八君は良いんですかィ…?土方で…」

「は?」

「新八君が土方が良い、ってんなら俺ァとんだお邪魔虫だったってぇ訳だ…真っ赤な顔してやすねぇ…嬉しかったんですかィ?すいやせん…邪魔ァしちまいやした…」

沖田さんが、寂しそうに笑って刀をしまう。
えっ…?何が…?

「土方テメェ、新八君幸せにしなかったら殺しやすぜ?」

ジロリ、と土方さんを睨んで、すぐに寂しそうな顔になる。
なんて目で土方さんを見てるの…?沖田さん…
そのまま、トボトボと居間を出て行く…あ、つまづいた…