かぼちゃのオバケと遊んだ日



「新八ィ!新八ィー!!知ってやすか?もうすぐハロウィンですぜィ!」

目をキラキラ輝かせた総悟君が、僕に駆け寄って来ていきなりそんな事を言う。
あー………好きそうだよな、そーゆー事…
又面倒くさい事になりそうだし…なんとか誤魔化して、気を逸らそう…

「知ってますよ、ハロウィンぐらい。でもアレ子供のお祭りじゃないですか、それも外国の。僕らには関係無いでしょ?」

僕がはぁ、と溜息をついてそう言うと、なんでか嬉しそうだ。

「そう言うと思いやした。じゃぁ俺は勝手にやりやすぜ。」

「あ、そうですか。僕を巻き込まないで下さいよ?」

ちょっと冷たかったかな?って思ったけど…どうせ僕も巻き込まれるんだろうし…
まぁ、良いか。心構えが出来ただけ良しとしよう。

「ドS、ハロウィンって何ネ。」

僕と一緒に居た神楽ちゃんが、興味津々で総悟君に聞いてる。
…ウソ教えなきゃ良いけど…

「チャイナてめぇハロウィン知らねェのかよ?ハロウィンってのはなぁ、仮装したガキがそこらじゅうの民家を練り歩いて菓子を強奪する祭でィ。」

「それ間違ってるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥっ!!!!!」

一瞬ギラリと目を輝かせた神楽ちゃんが怖いよ…
あっぶないなぁ!

「あのね、神楽ちゃん。ハロウィンってのは、仮装した子供達がご近所の家を訪ねてお菓子を貰う、っていう子供達のお祭りなんだよ?決して強奪はしないからね?」

「えー?」

「イヤ、えー、じゃないから。奪い盗っちゃ駄目だから。」

残念そうな神楽ちゃんに言い聞かせてると、総悟君がチッチッチッ、と指を振る。

「菓子くれなきゃイタズラする、って脅してんじゃねぇですかィ。立派な脅迫でさァ。」

「そんな事言ってるアルか!?それはゴーダツアルヨ、新八!」

神楽ちゃんと総悟君がニヤニヤし始めた…
変なトコで気が合うんだから、この2人…

「そんなの言ってるだけでしょうが!お菓子くれなくたって本当に何かする訳じゃないのっ!!」

「そうアルカ?」

「そうそう!」

僕がコクコクと頷くと、神楽ちゃんが残念そうな顔になる。
何でだよっ!?

「でも楽しそうヨー!新八ー、やるネ、ハロウィン!」

「だから…子供のお祭りだってば…」

このまま神楽ちゃんに押し切られても、きっとロクな事にならないんだ…
総悟君、何かニヤニヤ笑ってるし…

なんとかこの場を乗り切ろうと身構えると、誰かがポンと僕の肩を叩く。

「新八君はハロウィン嫌いかい?」

「…あ…近藤君…別に嫌いではないですけど…」

良い笑顔の近藤君が、はっはっはっと笑う。

「どうだ?クラスでハロウィンパーティーでもやらんか?」

「やりたいアルっ!ゴリ珍しくイイ事言ったヨ!」

神楽ちゃんが、すっごくいい笑顔で近藤君の腕にしがみつく。
ぽすぽすと神楽ちゃんの頭を撫でる近藤君は得意気で、なんか子供に久し振りに懐かれたお父さんみたいだ。
近藤君が言い出したら決まっちゃうんだろうなぁ…なんだかんだ言って、皆近藤君には全般の信頼を置いてるもんな、うちのクラス…

「総悟君良かったね、ハロウィンやるって…」

当然大喜びしてると思ってた総悟君が妙に大人しいんで僕が後ろを振り向くと、総悟君はあんまり嬉しそうじゃ無かった。
むしろムッとしてる感じで…どうしたんだろ…?嬉しくないのかな…?

「…どうしたの?嬉しくないの…?」

「…別に…俺ァ新八と2人っきりでやろうと思ってたんですがねェ…」

ぷぅ、と膨れる顔はなんだか可愛い。
…なんだよ、可愛いって…僕も末期だな…

「でも…皆でやった方が楽しいよ…?お菓子も一杯貰えるし…」

「…菓子ですかィ…そうですねィ…」

なんだか嬉しそうだけど、まだ何か考えてるような顔だよな…
ちょっと不安なんですけど…
総悟君とお話してる間に、山崎君や伊東君を巻き込んで、僕らを置いてきぼりにして話がどんどん進んでいって、30日の放課後に教室でハロウィンパーティーをやるって事にすっかり全部キッチリと決まってた…皆好きだよなぁ、こういうの。

暫く忙しくなるんだろうなぁ…ま、仕方ないか…



衣装を用意したり、パーティ用のお菓子を作ったりしているうちに、すぐに当日になってしまった。