それから少しして、銀髪の小人を先頭に、7人の小人と大きな犬が、それぞれ好きな歌を歌いながら、その小さな家に帰ってきました。
「おめ〜ら煩せぇよ!どうしても歌いてぇなら同じ歌を歌え!!」
「銀時の言う通りだ。皆でカツラップを歌おうではないか!」
「そんなのダサいアル!ピン子のドラマの歌唄うネ!」
「わん!」
「いや、アレには歌詞無いし…ここはロックだろう?」
「や、原作通りにはいほーとかいきましょうよ。」
「おじさんは演歌が良いなー…」
「…ウゼェ…」
全員意見が違って全く纏まりません。
銀髪の小人がぐしゃぐしゃと自分の髪をかき混ぜて、はぁ〜っと大きな溜息をつきます。
「あ〜も〜!歌は無し!無しな!!」
そのまま全員無言で家に入ると、家の様子がいつもと違います。
「銀ちゃん大変ネ!メチャメチャ美味しそうなニオイがするアル!」
ピンクの髪の小人が、新八姫のお弁当を見付けて頬張っていました。
「…ウメぇ…」
黒髪で包帯を巻いた小人も頬張っていました。
「リーダーも高杉も油断しすぎだぞ。誰か居るな…寝室か…」
黒髪で長髪の小人も頬張っていました。
「誰か?ちょ、怖い事言わないでよー!家には盗むものなんてないじゃん!!」
グラサンを掛けた小人も頬張っていました。
「あ!バナナが有る!」
ゴリラ似の小人も頬張っていました。
「美味しいですねー、こんなお弁当作る女の子にお嫁に来てほしいなー」
黒髪で地味な小人も頬張っていました。
「わん」
白い大きな犬も頬張っていました。
「甘味が足りねぇな〜」
銀髪の小人も頬張っていました。
皆で新八姫のお弁当を平らげた後、誰が様子を見に行くか押し付け合っていると、何も考えていない包帯を巻いた小人が寝室の扉を開けて、固まりました。
「…何か可愛いのが寝てんぞ…?」
「「「「「「何っ!?」」」」」」
全員で寝室の扉の前にぎゅうぎゅうになって中を覗くと、すやすやと眠る新八姫が目に飛び込んできました。
「うわっ…可愛い〜」
「何処の女の子だ?」
「ふわふわのドレスアル…」
「あれ…?何処かで見たような子だなぁ…?」
「…新八姫じゃないか…?」
ゴリラ似の小人が言うと、皆、はっとしてポンと手を叩く。
「えぇっ!?何でこんな所にお姫様が!?」
皆が慌ててバタバタと走り回っていると、煩かったのか、新八姫が目を覚ましました。
その気配を感じた小人達が、新八姫をぐるっと取り囲んで覗きこみます。
目を覚ました瞬間、沢山の顔に取り囲まれていた新八姫は、ビックリして泣きそうになりました。
「あっ…あのっ…皆さんどなたで…」
「…オメェこそ誰だ…?ココは俺達の家だ…」
包帯を巻いた小人がギロリと睨んで言うと、新八姫がビクリと肩を震わせて、今の状況を思い出しました。
「あっ!すみませんっ!!僕はお城に住んでいる新八と言います。あの、森で迷ってしまって…丁度このお家が見えたんで…少しだけ休ませて貰おうかと思って…勝手に入ってすみませんでした…あの。お弁当有るんで…皆さんで召し上がって下さい!せめてものお礼ですっ!!」
さっき食べたお弁当が新八姫のお弁当だった事に気付いた小人達は、今更出て行けとは言えず、だらだらと汗を流しながら愛想笑いを浮かべた。
「イヤイヤイヤ、困った時はお互い様だし?なぁ〜?皆〜?」
「ソウネ!ずっと居るとイイヨ!!」
「うむ、困ったご婦人を見捨てる訳にはいかんだろう。」
「いーんじゃない?」
「…それぐらい気にすんな…」
「可愛い娘なら、大歓迎だよ!」
「皆もこう言ってるし、ゆっくり休んでいくと良いぞ。」
思う所はそれぞれ違いましたが、皆快く新八姫を迎えてくれました。
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