すぐに新八に追いついてこっそり後をつけて行くと、大きく手を振りながら真選組の山崎が現れる。
立ち止まって仲良く話しだす2人は、まるでそこで待ち合わせをしているようだ。
「銀ちゃん大変ネ!新八が男に走ったアル!!」
「イヤイヤイヤ、ジミーは無いだろ、ジミーは。銀さんならまだしも…」
「銀ちゃんも無いネ…」
「イヤ、銀さんならアリだろ。」
「無いネ。」
2人が小声で攻防していると、新八が山崎と別れて歩き出す。
又新八の後をつけて2人が移動を始める。
「ほらな?やっぱり違うだろ?ジミーは無いって。」
「何がですか?」
銀時が勝ち誇ったように言うと、2人の後ろから山崎の声が聞こえる。
「うおっ!ジミーいつの間に!?」
「地味だから気付かなかったアル。」
「何それ!?俺を何だと思ってるんですか!?」
「お前にかまってる暇無いんだよ。」
「新八が行っちゃうネ!」
抗議する山崎を無視して2人が又新八を追い始めると、山崎も2人についてくる。
「えっ?ちょっ…新八君がどうかしたんですか!?ねぇ!ダンナ!!」
しつこく食い下がる山崎に、銀時がかいつまんで説明すると、今度は山崎が慌てだす。
「ええっ!?新八君これから公園に行くって言ってましたよ?それ、デートじゃないですか!間違い無いですって!!そんなぁー…新八君に恋人なんて…奪うしかないじゃないですかぁー…」
ひっそりと腹黒い台詞を吐いた山崎にパンチを入れつつ、2人が公園に急ぐ。
3人が公園の側に着くと、あの鼻歌を歌いながらスキップで公園に向かう新八を発見した。
「うわっ!めっちゃご機嫌だ…」
「顔も赤いアルヨ…」
「可愛いなぁ、新八君…」
物陰に隠れて新八を凝視する3人の背後から、黒い影が近付いてくる。
そして、殺気を放ったまま、ぐい、と銀時の肩を掴む…
「君達…新八君にストーカーですか…?」
銀時の肩を掴んでいたのは、黒い隊長服に明るい色の髪を短く刈り込んだ眼鏡の男…伊東鴨太郎だった。
「いっ…伊東さん!?俺らは違うんですよ!」
「そうだそうだ〜!てめぇらの大将じゃねぇんだよ。俺らのは見守ってるってゆ〜の。」
「そうアル!新八が悪い女に騙されてるネ!」
クイッと眼鏡を上げた伊東は、真剣な顔で大人2人を無視して神楽の言葉にぴくりと反応した。
「…新八君が…?それを君達は黙って見ていると言うのか!?今すぐ止めなくては!」
「まだ相手が分かんねぇんだよ。だから見守ってんじゃねぇか…」
これだから真面目な眼鏡は…などとブツブツ文句を続ける銀時を無視して、伊東も3人の側に身を隠す。
「なるほど…僕の新八君の危機なら、僕も当然黙ってはいられないな。」
「…コイツもかよ…」
うんざりしながらも、新八をスト…見守りつつ先に進むと、時計の横に有るベンチに着いた新八がそこに座る。
ひどく幸せそうに可愛らしくにっこりと微笑む新八に、全員骨抜きになってぷるぷると震える。
が、ハッとした新八がぐっと顔を歪める。
「…新八君はどうしたんだ…?いつものあの可愛らしい笑顔を歪めてしまって…笑うのを我慢しているように見えるんだが…」
「僕には笑ってくれましたけど…」
伊東と山崎が首を傾げていると、俯いてしまった神楽がボソリと告げる。
「…ワタシ…キモいって言ったネ…誰かの事想ってニヤニヤしてたから…ムカついたヨ…そしたら、笑わないって…おっさんもイヤかも、って笑わなくなったネ…」
「「おっさん?」」
怪訝な顔の真選組2人がまだ何か言い募ろうとすると、ベンチに座っていた新八が、立ち上がって大きく手を振る。
ついに新八を騙している悪い女の登場かと4人が身構えると、黒に身を包み、でも頭だけは明るい栗色の、全員が良く知る人物がダラダラと近付いてきた。
「「「「沖田ァァァァァ!!!!????」」」」
思わず叫んでお互いの口をふさぎ合う。
2人はキョロキョロと辺りを見回すが、4人が決死の覚悟で気配を消したのでなんとか見付からずに済んだ。
気配を消したままの4人が、もう少し近い茂みまで移動すると、2人の楽しげな声が聞こえてくる。
「新八君お待たせしやした。土方がしつこいったらねぇや…」
「御苦労さまです。でも僕、そんなに待ってないですよ?それに万事屋は今日も仕事なんか無かったし…」
「ま、そーですねェ。」
「…人に言われると、なんかムカツク…」
「まぁまぁ、ブスくれんなィ…」
むぅっ、と膨れた新八の頭を、柔らかい笑顔を浮かべた沖田がゆっくり撫でる。
すると、機嫌を直した新八が、可愛らしくにっこりと微笑む。
が、すぐに泣きそうになって俯いてしまう。
「どうしたんでィ、新八君…なんで泣きそうなんで…?」
「…だって…僕…」
新八の顔を心配そうに覗き込む沖田の顔は真剣で、新八は目を逸らす事が出来なくなっていた。
遂にポロリと涙がこぼれ、ぐいっと引き寄せられた沖田の胸に顔を埋める。
「何が有ったんで…?それとも…俺とこんな風にしてんのは…嫌か…?」
「そんな事…っ!そんな事無いですっ!!沖田さんなんでそんな事言うんですかっ!?」
「…だって新八君…今日全然笑ってくれねェ…」
今にも泣き出しそうな顔で新八を見る沖田はいつになく可愛らしく、茂みに隠れた男3人の喉がゴクリと鳴る。
沖田の手がそっと新八の頬に添えられ、愛おしそうにするりと撫でると、新八がその手にすり寄ってぽろりと涙をこぼす。
「…だって…沖田さん…僕の笑った顔…気持ち悪くないですか…?神楽ちゃんに言われたんです…キモいって…自分では見えてないけど…本当は気持ち悪かったんじゃないかって…沖田さん優しいから…我慢してくれてたんじゃないかって…だから…笑わない様に…気を付けて…」
そこまで聞いた沖田は、酷く怒った顔で新八を見つめる。
「俺がそんな事思う訳ねぇだろ!新八の笑顔はすっげぇ癒されるんでィ!!そんなのチャイナがおかしいんでィ!!!」
ぷりぷり怒りながら、沖田が新八をぎゅうと抱き締めると、新八も大人しく沖田の背中に手を回す。
「気持ち悪く…無いんですか…?」
「あったり前だろィ!俺ァ新八の笑顔が大好きだ!」
「えへへ…嬉しいです…」
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