帰ってきた永久欠番
今日も僕が買い物当番だ。
昨日もそうたった気がする。
本当なら、3人でかわりばんこに買い物に行く筈なのに…いつも僕が買い物に行っている…
でも、それでも良いんだ。いつもアノ人に逢えるから。
見廻り中の真面目な顔を、そっと覗き見るだけだけど…それでも凄く幸せな気分になれるから。
毎日期待しながら、買い物に行っているんだ。
今日は結構買い物が有ったから荷物は重いけど、まだアノ人を見かけていないからちょっとゆっくりめに万事屋に帰る。
…今日は逢えないのかな…?何か事件でも有って、忙しいのかなぁ…?
もう少しで万事屋に着いちゃうんで、自然と僕の足は更にゆっくりになる。
「新八氏―!」
のそのそと歩いていた僕に、後ろから声が掛かる。
この声、この呼び方…まさか…!?
「とっしー!?」
慌てて振り返ると、真選組の隊服を来て、全開の笑顔で大きく手を振りながら、土方さんが僕に向かって走ってくる。
…遅っ…
僕が立ち止まって呆然とその姿を眺めていると、やっと追い付いた土方さん…イヤ、とっしーがハアハアと息を切らして僕の前に立つ。
「新八氏歩くの速いでござるよ!」
えっ…だって…
「とっしー…この間ので消えたんじゃ…」
突っ込む所は沢山有るけど、まずコレだよね。
お通ちゃん公式ファンクラブ決定戦のあの時に、土方さんがそれこそ形振り構わずに消し去った筈なのに…
とっしー本人だって、納得して消えていったんじゃ無かったの?
うん…土方さんがなり替わってるとっしーなんかじゃない。本物のとっしーだ。
「新しい心残りが出来たでござる。十四郎にはナイショにして欲しいナリよ、新八氏。」
しーっ、と唇に指を当てて僕にウィンクするけど…
そんなのすぐにバレるよね…
「…僕が言わなくてもすぐにバレると思いますよ…?」
「えっ!?本当ナリか!?」
「はい、多分…」
僕があはは、と愛想笑いしながら言うと、とっしーがあわあわと慌てだす。
「バッ…バレないようにオシャレしないで来たのに…マズいなぁ…」
…お洒落なんだ、アレ…
ちょっと気が遠くなりながら、呆然ととっしーを見ていると、僕の視線に気付いたのか、ハッとして頬を染めて、更にモジモジし始める。
なんなんだ…?
「新八氏、そんなに見つめないで欲しいなー…そりゃ嬉しいけど、照れるZE☆」
「…はぁ…?」
モジモジクネクネしてる上に、何を言ってるんだろう…?この人…
「…あのー…心残りって一体何なんですか…?僕に何か関係有るんですか?」
とにかく、僕に何か用事が有るんだろうから、さっさと終わらせて貰おう。
どうせ又フィギュアが2個欲しいとかそんなんでしょ?
多少並ぶくらいなら付き合ってあげよう。
「なにか手伝えるんなら手伝いますよ?」
僕がそう言うと、とっしーが固まったまま動かなくなる。
もう、ホントなんなんだろう?
とっしーの目の前で手をひらひら振ってみると、びよん、と飛び退って真っ赤な顔でにへら、と笑う。
「もうー!新八氏ってばダ・イ・タ・ン☆」
変なポーズで指差されると…ものっすごくイラッとするんですけど…
「何がですか?何かイラッとするんですけど。」
「ツンデレ!?ツンデレでござるか!?萌えるんですけどーっ!!」
…なんでだろ、本格的にイラついてきた…
変に会話なんかしなきゃ良かった…
「ツンデレだか何だか知りませんけど、特に用が無いんなら僕帰りますね?」
もうここから立ち去ろう…これ以上関わってたら僕の血管切れるよ…
「まっ…待って待ってー!!!」
とっしーが必死な顔で僕の袖に掴まってくる。
何か…土方さんの姿でこんな事されると凄い変な感じ…
ちょっとだけ尊敬してたんだけどな…ちょっとだけ。
まぁ、表情とかは土方さんとは全然違うけどさ…
でも、変な感じ。
はぁーっと溜息を吐いて、とっしーを見下ろすとちょっと涙目になってるよっ!?
もう勘弁して!!土方さんのこんな姿見たくないよ…
「じゃぁあの、用事を早く言って下さい。何ですか?フィギュアですか?ゲームですか?」
「えっ…?」
「並ぶんですよね?限定版とか買うんじゃないんですか?」
とっしーが、キョトン、と僕を見る。
え…?違うのかな?それ以外僕に何の用事が有るの?
疑問で一杯の顔でとっしーを見ると、頬を染めて、又変なポーズをとって僕を指差す。
何かムカツクなぁ…
「違うでござるよ新八氏。拙者の口から言わせるなんて、ほんとツンデレでござるなぁ。」
「や、別にツンデレじゃないし…」
じとりととっしーを見ると、ちょっとビビリつつもまだ何か言う。
「かっ…感じてたでござるよ、新八氏の熱い視線!だから拙者…戻って来たでござる!!」
モジモジと手をこすり合わせながらも、ジッと僕の目を見て話す。
視線…って…
まさか…僕が隠れてるつもりだったの…バレてた…?
「さっ…さっぱり話が見えないんですけどっ…?」
ごっ…誤魔化さなきゃ…!
とっしーなら…なんとか誤魔化せる…よね…?
アノ人にバレたら…きっと嫌われちゃうよっ…
「仕方無いナリなー!どうしても拙者の口から言わせたいでござるな?新八氏☆」
又何か変なポーズをとるけど…もう構ってらんない。
なんとか誤魔化しきらなきゃ…
「何がですかっ!?僕、とっしーの事なんか見て無いですっ!」
「またまたー!照れてるでござるな?新八氏のキモチ、伝わってるゾ!」
「何ですか!僕の気持ちって!!」
「新八氏…拙者の事、好きであろう?」
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