何気ない日常大切な日常



他とは違うレンアイをして、他とは違うカレシが出来ても、日常なんてモノは特に変わるでもなく、毎日はバタバタと過ぎていくもので…

「お妙さーん!おはようございまーす!!」

「朝から煩ぇんだよゴリラ!!」

今日も僕の朝は、姉上の怒鳴り声から始まる。
居間に転がる近藤さんの屍を跨いで朝食の用意をしていると、屍がピクリと動く。

「おはようございます、近藤さん。」

「おはよう新八君。」

僕が笑顔で挨拶を交わすと、むくりと起き上がった近藤さんがお手伝いしてくれる。
卓袱台に用意が出来た頃、呼び鈴がブーッと鳴る。
あ…もう時間か…

「おはよーごぜぇやす。」

「ご苦労様です、沖田さん。」

最近は、近藤さんを迎えに来るのは沖田さんがほとんどで…
気を使われてるのかなぁ…なんて思ってしまう。

「沖田さんも朝ご飯食べますか?」

「へい!毎朝の楽しみでィ。」

にこりと嬉しそうに笑う顔を、毎朝見れるようになったのは…とても嬉しい…
僕の料理を美味しい、って言ってくれるのは…とても幸せで…
それに、沢山で食べる朝ご飯は…なんだかおいしい気もする。
さっさと食べ終わって、じーっと僕の顔を見ていた沖田さんが、僕も食べ終わるとそっと僕の頭を撫でる。

「旨い飯、ごちそうさん。」

意外と暖かい手がとても気持ち良くって…それだけで毎日が幸せに感じる。
沖田さんも…幸せって思っててくれたら…嬉しい…

僕が万事屋に出勤する時間になると、近藤さんと沖田さんも一緒に家を出る。
そして、沖田さんは僕を万事屋の前まで送ってくれるんだ…
その短い時間が、何気無いお喋りが楽しくって…ついついゆっくり歩いてしまう。
そんな僕の歩幅に沖田さんも合わせてくれて…沖田さんも僕と一緒に居るのが嬉しい、って想ってくれていたら…凄く良いのに…

万事屋の前に着くと、又沖田さんが僕の頭を撫でる。

「今日も頑張りなせェ。」

「沖田さんも、仕事サボらないで下さいね?」

僕が釘を刺すと、ニヤリと笑ってポンポンと頭を叩く。

「それは約束できねェな。」

「もう!駄目ですよ?」

ははっ、と笑ってふわりと手を振って歩きだす。
そんな冗談言ってるけど…事件が起これば真剣になる事ぐらい知ってる…
それが命に関わる事だって事も。

…どうか…沖田さんが今日も一日無事でありますように…


僕が万事屋に入っていくと、ソコはまだ暗くて…
今日も僕の仕事は2人を起こす所から始まる。
まずは手前の和室から…

「はーい、銀さん起きて下さーい!」

ガラリと襖を開けて布団を剥ぐと、モソモソと動いて薄眼を開ける。

「…はよ…後5分…」

「イエ、もう駄目ですから。」

「んじゃ…新八がおはようのちゅー…」

「しませーん。叩き斬られますよー?」

「…あー、はいはい…ラブラブだねー…沖田君とは毎朝するんだろ…」

「うるっさいです、しませんそんな恥ずかしい事。」

どすん、と銀さんの背中を蹴ると、うぅっと呻いて丸くなる。
よし、起きた。
次は神楽ちゃんだ。

部屋を移ってガラリと押入れを開けると神楽ちゃんがモゾモゾと動く。

「おはよー、神楽ちゃん起きてー?」

「煩い駄眼鏡…おはよーのチューしないと起きないアル…」

「…親子かよ…はい、ちゅー」

柔らかい頬っぺたに、ちゅっと唇を当てると、吃驚した神楽ちゃんがガバリと起き上がる。

「新八ドSと別れたアルカ!?やっぱりワタシが良いネ!!」

「別れてないよー、でも神楽ちゃんは特別だからね。」

僕が笑うと、神楽ちゃんも満面の笑みを浮かべる。

「キャホー!ドSに自慢するネ!!」

叫んだ神楽ちゃんが、押入れを飛び出して走っていく…
これぐらいなら…許してくれるよね…?沖田さん…

ちゃっちゃと朝ご飯の支度をして、ちょっと期待を込めて銀さんを見ると、バリバリと頭を掻いて僕から目を逸らす。

「…仕事は入ってねぇよ…」

…今日もか…
はぁ、と溜息を吐くと、神楽ちゃんが元気に

「遊びに行ってくるネー!」

と飛び出していった。
すぐに銀さんも、ふらりと出て行ってしまう…
仕事捜してこいよ…

仕方ないんで、僕は洗濯をして掃除を終わらせる。
なんか…僕…何やってるんだろ…
お茶を飲みながらボーッとテレビを見ていると、大江戸ストアのタイムセールの時間になったんで買い物に出かける。
大江戸ストアの前には、逢いたかった黒服…
アレ…?なんか凄く機嫌悪い…?

「沖田さん!」

呼びかけて駆け寄ると、ジロリと睨まれる…何…?

「新八くん…俺ァ新八くんの何なんでィ…?」

「…は…?」

イキナリの問いかけに、ジッと沖田さんを見ると、所々隊服が汚れてる…あっ!

「…神楽ちゃんに会いました…?」

恐る恐る問いかけると、又、ジロリと睨まれる…あー…

「わざわざ、俺を捜して会いに来やしたぜ?あのクソチャイナ。」

………あー………

「沖田さんは…僕の恋人です…」

恥ずかしいけどそう言ってそろりと見上げると、顔がちょっと赤くなってるけど…まだムスッと膨れてる…

「…トクベツ…ですよ…?神楽ちゃんは…妹みたいなものですから…」

「へぇ、新八くんは姐さんにもチューするんですかィ?」

あー、もう!
言い訳しても、機嫌が全然直らないよ…本格的にスネてる…

「神楽ちゃんにしたのはほっぺですよ?沖田さんとは…その…普通にするじゃないですか…」

「へぇ、何処に?」

ニヤリと笑って僕の顔を覗き込んでくる顔は…もういつもの意地悪なドS顔で…
やっと機嫌直したのは良いけど…変なスイッチ入っちゃってるし!!

「だからっ!くっ…唇…に…そんなの沖田さんだけなんですからね!?」

僕が顔に大量に血を上らせながらやっとの事でそう言うと、すっかり機嫌の直った沖田さんがにっこりと笑う。

「安心しやしたぜ?今晩も一杯チューしやしょうね。」

「…ばか…」