シンデレラ
むかしむかし、とある大きな屋敷にシンデレラと呼ばれる可愛らしいこどもが住んでおりました。
シンデレラはなんだかんだで結構裕福な家の子にも関わらず、毎日せっせと働いておりました。
それは、お話のように意地悪な継母と姉達に苛められている、という訳では決してありません。
どうしても、シンデレラが働かなければいけない訳が有ったのです。
まずは、姉が作る暗黒物質から家族の身を守る為に、シンデレラが全ての料理を作るようになりました。
次に、やんちゃすぎる妹の破壊行動の後片付けに疲れ果てて辞めていったメイド達の代わりに、掃除をするようになりました。
そして、唯一残ったメイドはアンドロイドだったのですが、彼女は力加減がおかしく、洗濯物を全てボロ雑巾にしてしまうので、代わりに洗濯をするようになりました。
更に、主人の権力を無駄に行使して際限無く甘いモノを食べようとする父を止める為に、お茶の用意までするようになりました。
そこまで自分でやるようになると、家族の身の回りの世話もついでにやってしまおうと思うようになって、シンデレラは朝も夜もなくよく働くようになってしまったのです。
そんな働き者のシンデレラを家族は皆大好きで、なんとか手伝いをしようと隙を狙っていました。
ですが、誰かが何かを手伝うと、必ず失敗に終わってシンデレラの手を余計に煩わせてしまうのです。
それが申し訳なくて、結局はシンデレラに全ての仕事を任せるようになってしまったのです。
それでも家族は皆幸せで、楽しく賑やかに暮らしておりました。
そんなある日の事、お城の王子様の誕生日に盛大な舞踏会が開かれる事になりました。
それは、王子様のお妃様を選ぶお見合いパーティーも兼ねていたので、国中の女の子達は一斉に色めきたちました。
なにせ、この国の王子様はイケメンです。
少し性格に難有りですが、それを引いても余り有る程のイケメンです。
そんな舞踏会に、シンデレラも興味を持ってしまったからさあ大変。
シンデレラを護る為、家族の皆は知恵を絞りました。
しかし、遂にシンデレラの口から恐れていた言葉が紡がれてしまいました。
「今度、お城で王子様の誕生日に舞踏会が開かれるんですね…僕も行ってみたいなぁ…」
居間を掃除しながら、ポツリと呟いたシンデレラの声を家族は無視出来ずに大騒ぎです。
「ちょ!新ちゃん何言ってんの!?あの…アレだよ?この国の王子なんてロクなモンじゃないよ?お父さんはあんなヤツ許しませ〜ん!」
父はそう言って恐ろしく目を泳がせながら、シンデレラの肩をガッシリと掴みます。
まるでもうシンデレラの結婚が決まったような口ぶりですが、シンデレラ大好きっ子な父は、王子がシンデレラを選ばないなどとは夢にも思っていません。
ウチの子が宇宙一可愛いと思っているのです。
その上、この国の王子を良く知っている彼は、大事なシンデレラを王子の毒牙にかけてはなるものか、と本気で止めにかかりました。
…まぁ、どんなイケメン好青年が来たとしても、お父さんは許しはしないのですが…
「…え…?そうなんですか?父上王子様をご存じなんですか?」
シンデレラは父の剣幕に驚いて目を丸くしました。
ついでに我が家のぐうたらな父が、王族を知っている事にも驚きました。
「そうそう!だから新ちゃんは、もうず〜っと銀さんと一緒に居ようね〜?」
そう言ってシンデレラの顔に異様に近付く父の頭を、姉のアイアンクローが襲います。
「もう、お父様ったらおふざけが過ぎますよ?新ちゃんにおかしな事したら天パ毟んぞ?」
どこにも隙の無い笑顔でギリギリと父の頭を締め上げて、姉は父をシンデレラから遠ざけました。
部屋の壁に叩きつけて。
「お父様…!」
「お父様は強い方だから大丈夫。そんな事より新ちゃん、あなたアノ王子様の噂を聞いた事有るでしょう?冷酷なサド王子よ?そんな男性に嫁いで新ちゃんが苛められたりしたら、私、暴れてしまうかも…」
うふふ、と笑う姉が怖くて、シンデレラはぶるりと震えました。
ですが、どうしても王子様に会ってみたかったので、勇気を振り絞ってなんとか少しだけ反論しました。
「でも姉上っ!噂はあくまで噂です。本当にそうなのかはこの目で確かめてみないと分かりません。」
必死で食い下がってくる涙目の妹を猛烈に可愛いと身悶えしそうになりながらも、この件だけはどうしても譲れません。
姉も、王子様にシンデレラを会わせたら、確実に持っていかれると確信していたのです。
なぜなら、シンデレラが宇宙一可愛い、と思っているからです。
「確かめなくても知ってるネ。あんなドSには絶対会わせたくないアル。アイツ絶対新八にメロメロになるネ!」
そう言って、妹がシンデレラにギューッと抱きついて頬を膨らませます。
そのあまりの可愛らしさに、シンデレラはクスクスと笑って彼女の頭を撫でました。
「もう、神楽ちゃんってば…お会いした事も無い方、それも王子様をそんな風に言っちゃ駄目だよ。それに、僕にメロメロって…皆贔屓目過ぎだよ?」
シンデレラは自分が家族を大好きなように、皆も自分を好いてくれている事をちゃんと知っています。
だから皆が自分に気を使ってそんな事を言ってくれているのだと思って嬉しくなりました。
「いいえ、新八様はこの国で一番可愛らしい方です。私のデータによると、王子の心を鷲掴みにする確率は99.999999999999999………%です」
無表情のまま、唯一残ったアンドロイドのメイドもシンデレラに言い放ちます。
「たまさん…それは言い過ぎです…」
照れたシンデレラが顔を真っ赤にして俯く姿は、家族全員のハートを撃ち抜きました。
一気に萌え上がった坂田家は、見つめ合い、頷き合いました。
「あ〜、そう言えば招待状3名様迄だったわ。あ〜、残念だな〜1人留守番だな〜神楽、お前留守番な。子供だから。」
「ワタシ絶対行きたいアル!ご馳走食べ放題…なのに…」
「え…?」
じーっと自分を見つめる妹の目に涙が浮かびます。
それを見たシンデレラは、嫌とは言えませんでした。
「…うん、神楽ちゃんいっぱい食べてきなよ。ウチじゃ食べられないご馳走とか出るね!きっと!!」
そう言ってにこりと笑った顔が落ち込んでいるのに全員が気付きましたが、それでも可愛い可愛いシンデレラを王子様に持って行かれたく無かったのです。
「ちゃんとタッパーで新八のぶん持って帰ってくるアル!」
「うん、ありがと神楽ちゃん。ご馳走楽しみにしてるね?」
「任せるヨロシ!」
シンデレラはギューッと抱きついてくる妹の頭を撫でてにこりと笑いますが、やはりその表情は曇ったままです。
「あの!アレ!デザートも持って帰ってくるから…」
「父上…僕が居ないからって甘いもの食べ過ぎないで下さいね…?」
父がなんとか気分を盛り上げようと口を挟みますが、シンデレラはジロリと睨んでお小言を言いました。
しかし、やはりその表情はいつもと違って迫力が足りません。
「…仕方ないわね…全然好みじゃないけど、本気出して王子様落として家に連れて来るから。新ちゃんが存分に見たらすぐに捨てるけど。」
「姉上ェェェェ!?止めて下さいィィィィ!!そんな事したら打ち首になりますからァァァァッ!!写真!写真撮ってきて下さいっ!王子様の!!」
姉の恐ろしい言葉に、やっとシンデレラはいつもの勢いの有るツッコミを取り戻しました。
「あら、そんなので良いの?じゃぁ、着替えシーンとか入浴シーンとか寝顔とかで良いかしら?」
「そんなん要るかァァァァ!!普通の!普通ので良いですからっ!!」
「…そうなの?じゃぁいっぱい盗撮ってくるわね。」
「…犯罪は止めて下さい姉上…」
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