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俺がそう言うと、赤く頬を染めたまま新八くんがとても嬉しそうに笑った。
俺はその笑顔を護る為に闘って…そして又その笑顔を見る為に、此処に戻ってこようと思ってるんですぜ?
だから新八くんを絶対ェ失いたくねェ…壊したくねェ…
嬉しそうな笑顔のまま俺に茶を淹れてくれたり茶菓子を勧めてくれたりする姿はまるで嫁さんみてェで…俺の妄想の中だけでは幸せな家庭が永遠に続く筈だった…新八くんの言葉を聞くまでは…
「沖田さん、あの、実は相談が有りまして…」
「…何でィ?」
言いにくそうにチラチラと俺を伺う時は、大体旦那との事柄だ。
そんな話を聞かされる度に、俺の心は見えない刀でズタズタに斬り裂かれる。
折角押さえてる俺の中のケダモノが、顔を出しそうになっちまう。
「あの…ですね…最近銀さんと…あの…キッ…キスをするようになったんですけど…」
あぁ…遂にこの時が来ちまったのか…
俺の心が殺される日が…
「で…ですね…ここの所、その先も…求められるようになってですね…こっ…こんな事、沖田さんにしか相談出来なくって僕…」
恥ずかしさでか、真っ赤に顔を染めた新八くんは残酷だ。
まぁ、俺の気持ちなんざ知らねェんだ、当たり前か。
「…新八くんは、シたくないんで?そーゆーの、興味有る年頃だろィ?」
俺が全くの無表情になったのに、新八くんは気付いただろうか?
コレは、人を殺す時と同じ顔だって。
あぁ、そんな事気付く訳無ェか。
新八くんの前では絶対ェ診せる事のない表情だった筈だから。
全ての感情を殺して何も感じないようにしなきゃ、いくら俺でも大量虐殺なんざ出来やしねェ。
でも…
今の新八くんの話を聞くのは、大量虐殺より難しいや。
感情が…溢れ出してきちまう…
「興味無い訳じゃないんです。銀さんの事だって、好き…だし…でも、何かが引っ掛かってもう1歩が踏み出せないんです…」
何か、って…そんな事俺が判る訳無ェでしょうが。
想い想われた事なんざ無ェ俺に、そんな感情判る訳が無ェ。
「さてねェ…怖いんじゃねェ?」
「…怖い…んですかね…うん、そうかもしれません。その1歩を踏み出したら、もう戻れない気がします。こんな風に沖田さんと話をする日常も無くなってしまう気がして…怖いのかもしれません。」
ふわり、と笑う姿があまりにも儚げで、俺はつい新八くんを抱きしめてしまった。
そうしないと、新八くんが何処かに消えてしまいそうで、俺はきつくきつく新八くんを抱きしめてしまった。
「…沖田さん…?」
「新八くん…居なくなんないで下せェ…俺ァ…俺ァ新八くんが居なくなったら何処に行ったら良いのか判んねェよ…好き…でさァ…新八くんを俺のモノにしてェ…旦那から奪いてェ…」
「おきた…さん…?」
俺の腕の中でビクリと震える新八くんを感じて、やっと自分の仕出かしちまった事に気が付いた。
俺は…もう…駄目だ…
もう、元には戻れねェ…
友達だなんて、隣に居る事も出来ねェ…
そう想った瞬間、俺の中のケダモノが、斬り刻まれた傷口から這いずり出てきやがった。
そっから先の記憶は、おぼろげにしか無ェ。
俺ァ、新八くんを滅茶苦茶に犯した。
それでも最後の理性だったのか、傷だけは付けなかった。
その分、ねぶるようにしつこく施した愛は、消えない花になって新八くんを真っ赤に彩った。
何度も何度も何度も何度も何度も。
イキ過ぎて泣いて許しを請うても俺は止まらなかった。
この瞬間に一生分の快楽を得ようとするように。
この瞬間に一生分の快楽を与えるように。
我に返った時には新八くんの意識は無くなっていて…
真っ赤な花に埋め尽くされているのに、真っ赤な血は流れていなくて俺ァ少しだけ安心した。
どんなになっても、俺ァ新八くんが大切で大切で堪らないのだと。
でも、俺ァその大切な人を裏切って傷付けた。
もう二度と顔も合わせる事は出来無ェだろう。
新八くんが旦那に泣きついたら…俺ァ旦那に殺されるだろう。
だが、俺ァもしそうなってもその行為を甘んじて受け止めるだろう。
それに値する事を、俺ァ大切な人にしちまったんだから。
意識の無い新八くんを綺麗に清めて、新しい寝間着に着換えさせて布団に横たえる。
そして最後に一度だけ、その柔らかな唇に口付けた。
さいなら、新八くん。
いつまでもずっと、愛してまさァ。
××××
最近新八の様子がおかしい。
風邪をひいたと2〜3日休んだ日からずっと、極力肌を隠すようにアンダーを着こんでいる。
病み上がりだから寒いのかと思っていたが、俺が誘っても風邪がうつるからと言って抱きしめさせてもくれない。
少し前なら可愛く恥じらいながら、それでも嬉しそうに『あったかい…』なんて言ってくれてたってぇのに。
その上、何をしていても、たまにボンヤリと遠くを見て、急にモジモジと動き出す。
その動きはどう考えたって発情しているソレだってぇのに。
何で俺に応えてくれない?
そう言う事を考えるのはフケツよ!とか乙女な事でも考えてんのか?アイツ童貞だから有り得んな。
それとも…
そういやぁ、ここ最近沖田君の姿も見てねぇな。
こないだまでは、仕事で江戸を離れてたみたいだけど?
志村家に現れるゴリラ曰く、心を入れ替えて真面目に仕事してるとかなんとか。
あんなに毎日仕事サボって新八に逢いに来てたってぇのにおかしいよな?
そういやぁ、新八随分と俺達の事沖田君に相談してるって言ってたっけなぁ。
そろそろ俺とエッチする、とか新八に言われて立ち直れなくなったか?
それとも…キレて新八に手を出したのか…?
もしそうなら許さねぇ。
人様のモンに手ぇ出したヤツがどうなるか…タップリ教え込んでやんなきゃなぁ。
でも、その前に新八だ…
俺のモンだっていうのに他の男にホイホイ犯られるなんざ、オシオキが必要だろ?
たっぷりじっくり聞きだしてやるよ…
××××
あの日から、僕は沖田さんに逢っていない。
ちゃんと話が聞きたいのに、避けられているのか偶然にも逢う事が出来ないからだ。
あの言葉の真理が知りたい。
沖田さんは本当に僕の事が好きなのか…そんな気持ちを持っていたのに、銀さんとの話を僕は聞かせていたのか…?
だから…僕にあんなコト…したのか…?
普通なら、顔も見たくないと思うようなその人に、僕は逢いたくて逢いたくて堪らないのだ。
怖ろしい事に、あの人が居ない日常に寂しさを感じてしまっているのだ。
アノ時も…僕に分け入ってくるあの人に、嫌悪感等全く感じなかった。
それどころか1つになれた充足感で目が眩みそうな幸せを感じてしまったのだ。
僕には銀さんが居るのに…僕は銀さんの事が好きな筈なのに…
それなのに、沖田さんを想うとお腹の中がぎゅうと疼く。
沖田さんが僕にくれた華が消えていってしまうのが酷く悲しい。
消えないで欲しいと切に望んでしまうのだ。
こんな感情は絶対におかしい。
銀さん意外に持ってはいけないのに…これじゃまるで僕は沖田さんを好きみたいだ…
…好き…
そう想った途端、心臓がドキドキと騒いで爆発しそうだ。
突然のキスも、無理矢理だけど優しかったえっちも…僕は待っていたのかもしれない…
銀さんとのえっちに踏み出せなかったのも、本当に好きなのは沖田さんだったから…?
…でも…そんな事に気付いたってもう遅い。
沖田さんはきっともう僕と顔を合わせてはくれない…もう2度と…
そう想うと、僕の目からは涙が止め処なく流れるのだった…
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