「何で!?」
又も全力の僕の突っ込みをガン無視して、バカイザーは1歩又1歩と僕に近付いてくる。
その無表情がなんだか怖くなって、僕も1歩又1歩と後ろに下がる。
でも、狭い牢屋の中ではすぐに壁際に追い詰められて、僕は逃げる事が出来なかった。
「ならば…ならば俺はまだ間に合うのか…?お前を…新八くんを我が手にする事が出来るのか…?身体だけでなく、心も…」
「イヤ!何さらっと恐ろしい事言ってんだよ!身体だけでも、って…まさかそういう目的で今ここに居るのかよ!?」
「うむ。」
「イギャァァァァァァァァ!!!!!」
おかしな悲鳴を上げてなんとか壁側からは逃げる事が出来たけど、狭い牢内逃げる所なんかありゃしない!
すぐに又追い詰められて、今度はバカイザーの腕で囲まれてしまう。
「…ねぇ、沖田さん。2年前の僕は、休暇明けに貴方になんて返事したんですか…?それともバカイザーさんはそんな事覚えて無いんですか?」
凄い近くまで近付いて来ている碧い瞳を見つめて僕は一番聞きたかった事を聞いてみた。
それだけは、どうしても知りたかった。
「休暇か…長い休暇だった…」
バカイザーが僕から離れて遠い眼で何処かを見つめる。
え…?まさか…
「もしかして…僕…2年も休暇を…?」
「うむ。」
真顔で頷くバカイザーはカッコいいけど!
「イヤおかしいだろ!2年も連絡取れなかったら心配しろよ!」
「無事で居る事は近藤さんから聞いて知っていた。だが不思議な事に、タイミングが悪くて新八くんに逢う事が出来なかった。だから俺は避けられているのかと思って新八くんに似合う男になる為に…」
「バカイザーになったのかよ!?」
「違う、カイザーだ。如何なお前だろうと、いつまでもバカイザー等と言っていると怒るぞ。」
グッと顔を近づけられても、もう逃げられない。
ま、逃げるつもりなんか無いけど。
そんな不安そうな表情で縋りついてくる人なんか、少しも怖くない。
「やる事が大袈裟なんですよ、アンタ。そんな立派な人なんかじゃ無くたって、いつもの沖田さんで良いんです。僕は、いつもの沖田さんが良いんです。サボってばっかでダラダラ仕事してるように見えるけど、本当はちゃんと僕らを護ってくれてる沖田さんが良いんです。」
「新八くん…!」
半信半疑で不安そうな表情が可愛いなんて、僕の方が沖田さんよりドSなのかもしれない。
「ねぇ、沖田さん。もう1回言って下さい、貴方の気持ち。それとも、もう変わっちゃってますか…?」
2年も経って、姿も変わっちゃって。
心だってすっかり変わっているかもしれないって、僕だって不安なんだ。
だから、もう1回やり直して欲しい…
僕の言葉を聞いてニヤリと笑った顔は悪そうだけど、でもどこか嬉しそうだ。
ぎゅうと抱きしめられて、耳の傍でそっと囁かれたら、全身の力が抜けてしまう。
そう、だから。
だから僕はバカイザーの背中に腕を回したんだ。
「新八くん、俺ァ新八くんの事が好きでさァ、昔も今も。アンタの為に俺ァここまでのし上がった。アンタに相応しい男になる為に俺ァ此処まで来たんでさァ。後少しで江戸の全部が手に入る。ソレをアンタに全部やる。だから、ずっと俺の隣に居てくれ。俺の子を産んで…」
「無理ィィィィ!絶対無理ィィィィ!!アンタ僕を何だと思ってんだ!?男!僕は男なの!!子供産めないから!!こんな時にふざけるなんて最低だ!」
途中まで凄く幸せだったのに!
かなり無茶苦茶言ってたけど、僕の為なのかって想うと嬉しかったのに!!
ふざけてたんだ!
からかってたんだ!
悔しい…本気じゃ…無かったんだ…
ちょっと涙が零れそうになって、慌てて下を向く。
と、バカイザーが僕の肩を掴んで正面を向かせる。
「俺ァフザケてなんざいやせん!新八くんなら出来やす!ガンバ!」
可愛らしく手をつけて言われても無理なモンは無理!!
男!僕は男!!
「いや、ガンバ!じゃねェェェェェ…んむっ…」
そのまま唇もなにもかも奪われて、バカイザーのカイザーに無茶苦茶された僕は、何をどう頑張ったのか子供を授かった。
その上その子を次の日には産むという快挙も成し得た。
…全てがおかしい…おかしいけど…
でも、僕らの子供は可愛いし、カイザーは信じられないくらい優しいし。
今僕はとても幸せだ。
このまま一生この人の隣で生きていくのも良いかもしれない。
ううん、生きていきたい。
その事を伝えようと、子供を抱いてカイザーの元へ向かう。
しかし、やっと見付けたカイザーは、戦場の直中に居た。
何故かハリセンを持った銀さんと土方さんが、バッタバッタと真選組帝国の隊士達を倒している。突っ込みを入れて。
「え…?ちょ…何コレ!?銀さん?土方さん?」
「新八…って、え!?おま…何で子供ォォォォ!?」
「なんか、頑張ったら産めました。可愛いでしょ?」
僕が子供を見せると、銀さんと土方さんが僕を見てカイザーを見た。
「お前らァァァァ何を頑張ったァァァァ!?」
「せっ○すだ。」
「「バカイザァァァァァ言うなァァァァ!!」」
ハリセンを振り上げた2人が、何故か僕に飛びかかってくる。
嫌だ!この子だけは護らなくちゃ!!
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