花火争奪戦
今日は夏祭りの花火大会です!
張り切る神楽ちゃんに浴衣を着せる為に、僕ら万事屋3人は僕の家、恒道館道場に向かっている。
神楽ちゃんには姉上の浴衣を貸してあげる予定で、僕は自分の浴衣を持っている。銀さんには…父上の浴衣を着せちゃおうかなっ!姉上も、銀さんなら許してくれるよね…?
僕らが恒道館に着くと、姉上が出迎えてくれた。
「あれっ?姉上、今日仕事は…?」
今頃、いつもなら出かけてるはずなのに…
「折角のお祭りですもの、今日は仕事はお休み!」
イエ、姉上…キャバクラはお祭りこそ稼ぎ時なのでは…?
「可愛い新ちゃんに浴衣を着せるチャンス、逃すものですか…」
「妙、良い浴衣選んであんだろうな…」
お妙の親指が、グッ!と上がる。
「ちょっと銀さん、私を誰だと思ってるの?新ちゃんに似合うものを選ぶなんて、息をするより簡単よ!」
「へっ…流石だな…期待してるぜ。」
なんだか姉上と銀さんが楽しそうに話してる…実は仲良いのかな?アノ2人?
「姉上ー、神楽ちゃんの浴衣はどれですか?」
「うふふ、ちゃーんと用意してあるわよ?安かったんで、お揃いで買ってきてあるわ。」
綺麗な花柄の、白と紺のお揃いの浴衣。
わぁー!姉上にも神楽ちゃんにも似合いそうだなぁ!!流石姉上!!
「神楽ちゃんには私が着付けしますから、新ちゃんは自分で着れるわね?」
「あ、はい。僕のも出して有るんですか?」
用意良いなぁ…まぁ、どっちにしても、浴衣に着替える予定だったけどさ。
「はい、コレ。」
姉上が凄くいい笑顔で、紺の方の浴衣を僕に渡す。
「…姉上…?コレは………?」
「だから、新ちゃんと神楽ちゃんの、お揃いで買ってきたって言ったでしょ?耳クソ詰まってるのかしら?耳の穴かっぽじってやろうかしら?」
姉上が般若を背負った。
でも…ここで僕が引いたら女物の浴衣、着せられちゃうよ…
「やっ…でもコレ…女物じゃ…」
「私が、わざわざ、買ってきた、って言ってるのよ?」
姉上の般若が大きくなった気がする…でも…負けるな僕!頑張れ僕!!
「でもっ…」
「チッ…仕方ないわね…銀さん!お願い!!」
「はいよ。」
姉上がパチン、と指を鳴らすと、銀さんが僕を羽交い絞めにして僕の着物を剥がしにかかる。
ギャァ――――――!!
「新ちゃんごめんねー?や、俺もこんな事したくないんだけどさぁー、妙がさぁー…」
そんな事言いつつ何か手つきがいやらしいのは、僕の気のせいか!?何か鼻息が荒いのは僕の気のせいかぁ!?
あっと言う間に僕はパンイチに剥かれて、テキパキと浴衣を着付けられる。
「あ、やべ。もう少しゆっくり着付ければ良かった…じっくり新ちゃんの体を堪能するんだった…」
銀さんが悔しそうな顔で、チッ、と舌打する。
たっ…堪能って何だよっ!!僕が文句を言おうと口を開きかけると、ガラッ!と襖が開く。
「わー!新八似合うアルーっ!」
白い浴衣を着付けて貰った神楽ちゃんが、満面の笑顔で駆け寄って来る。
浴衣に合うように、髪を下ろして可愛いヘアピンで留めていた。
「わぁ、神楽ちゃん可愛いね?ヘアピンも似合ってるよ?」
えへへ、と笑ってぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「新八ー!ちょっと座るヨロシ!!」
何だろ…?僕がその場に座ると、神楽ちゃんが僕の頭を撫でて何かをぱちんと留める。
「うん、コレで完璧お揃いアル!」
ってちょっ…えぇ―――――っ!?
慌てて鏡を見ると、僕の頭には神楽ちゃんとお揃いのヘアピンが留めてあった。
「ちょっ…神楽ちゃんっ…!」
「お揃いアル!お揃いアルーっ!!」
神楽ちゃんが又飛び跳ねる。でも…こんなんじゃ外歩けないよぉっ!!
「神楽ちゃん、コレは流石に…」
僕が言い出すと、悲しそうに目を潤ませて僕を見上げてくる。
「セッカクお小遣いでお揃い買ってきたのに…新八はワタシとお揃いイヤアルか…?」
そっ…そんな目で見られたら…イヤだなんて言えなくなっちゃうよっ…
「いっ…嫌じゃないよ?でも僕男だからさ…皆気持ち悪いって思うよ…?」
「そんなコトないアル!新八可愛いヨ!!そうアルネ!!アネゴ!銀ちゃん!!」
2人を振り向くと、にっこり笑ってグッ!と親指を立てる。
いつの間にか、2人とも浴衣に着替えていた…
…仕方ないか………
「…じゃあ…このまま行くよ…」
僕が諦めて俯くと、神楽ちゃんがニヤリと笑った…?
ばっ!と顔を上げると、嬉しそうなニコニコ顔…
…気のせいか…?
「神楽グッジョブ!!」
「はん、チョロイネ。これで新八の可愛い姿、イタダキネ!」
「神楽ちゃん偉いわ。可愛い新ちゃんの写真が又1枚増えるわね!」
…何か3人でコソコソやってる気がするけど…気のせい気のせい。
そして僕らは花火大会の前にお祭りの露店を見物に行った。
知り合いに会いませんように………
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