屯所から大分離れた街中のベンチで、今の状況を整理する為に土方さんと話をした。
すると、僕と土方さんは大体同じような状況で、休み明けイキナリ皆が2年後だと言いだしてすっかり変わってしまっていたという。
色々話して、結局は僕らが突っ込みをサボっていたから神様に罰を与えられたんじゃないかと言う事になった。
僕らがサボっている間にも、皆は色々頑張っていたから…だから僕らだけ取り残されたんじゃないかって。

でも、そんな事思いついたからって、状況は変わらない。
僕らはそれぞれの場所に戻る事に決めた。
すっかり変わってしまったこの世界で、それでも己の場所で生きて行こうと決めた。

「一応…カイザー止めとくな…」

「…カイザー…」

あの人にもう逢えないと思うと心が痛んだ。
この世界でただ1人、僕を必要としてくれた人…
沖田さんとなら街中で偶然会う事も有ったけど、カイザーにはきっと逢えない。
もう2度と…逢えない…
そう思ったら、酷く胸が痛んで涙が零れそうになった。

「…僕は…万事屋に…」

「一緒に来るか?近藤さんに言ってもらえば総悟だって無茶はしねぇだろ。それに…あんなんなってたってアイツがオメェに何かする事はねぇからな…」

「え?」

「イヤ、なんでもねぇ。どうする?」

土方さんに着いて行けば、カイザーと一緒に居られる…でも…

「僕は万事屋に帰ります。」

「…そうか…」

くるりと向きを変えて、お互いの帰るべき場所へ歩きだす。
ヤムチャだろうとバッキュンボンだろうとオッサンだろうと皆僕の大切な家族なんだ。
やっぱり僕は、万事屋が良い。


『えー、続いてのニュースをお知らせします…』


大画面から流れてきたニュースを聞いて、僕らはベンチに戻った。
無造作に後ろに転がされてたジミー山崎をよっく見てみると、ちっさい山崎さんがぶら下がってた…

僕らが2年後だと思わされていたのは、ただのイボが織りなす世界だった。
畜生ビックリさせやがって!
突っ込みならなぁ!僕の右に出るものなんか居ないんだからな!!
皆にハリセン叩きこんで、僕らの世界を取り戻してやんよ!!

とりあえず山崎さんにハリセンを叩きこんで、僕らは走り出す。
皆を元に戻す為に。

…なのに、僕に飛びついて来てその我儘ボディを無遠慮に押し付ける神楽さんに、僕の理性は崩壊寸前だ。
なんか、イボでも良いんじゃないかな?
こんな可愛い子なら、イボでも良いんじゃないかな?
2つのイボでも柔らかいし、良いんじゃないかな?

「どけェェェ!俺がしとめる!!」

そんな僕を見兼ねた土方さんが神楽さんにハリセンを叩きこもうとすると、突然現れたカイザーが神楽さんを庇う。

え…?何で…?

呆然と見つめていると、倒れたカイザーを神楽さんが膝枕する。
…その姿は普通にお似合いで…僕の目からは、止め処無く涙が溢れた。

その間にも、カイザーはもっともらしい事を並べ立て、土方さんの心を揺らそうとしている。
…あぁ…イボが僕らを騙して止めようとしているのか…

「そっ…総悟ォォォォォ!!しっかりしろォォォォォォ!!」

すっかり騙された土方さんが、カイザーを抱き起こしてマヨネーズを飲ませる。


…嫌だ…

…嫌だ…

その人は、僕のだ…!

もうこれ以上、僕以外の人に触れて欲しくない!!

「さっ…触らないで!その人は僕のです!僕以外誰にも触らせないで!!」

僕が叫んで駆け寄ると、土方さんが避けてくれる。
そのままぎゅうと抱き付いて僕が泣いてしまうと、そっと優しい手が僕の頭を撫でる。

「探したぞ?どうして我の元から居なくなった。御前に危害を加えるとでも思ったのか?」

ふっと笑う顔は優しい。
でも、もう目が閉じそうで…

『イボをハリセンのようなモノで叩き…』

そう、カイザーはさっき神楽さんを庇って土方さんのハリセンに叩かれた。
…きっと、もうすぐ居なくなってしまう。

「…えっちな事されるって土方さんが…だから…恥ずかしくなって…」

僕が正直に言うと、カイザーはクスリと笑う。

「それは…したな。」

「え…?したんですか…?僕、男ですよ…?」

「そんな些細な事は関係無い。我は御前だけしか見えない。御前だけにしかいやらしい事はしない。」

そう言ってイタズラな笑顔を浮かべるから、僕は又顔に血を上らせてしまう。

「…僕も…ほんとはシたかったです…カイザーさんと…」

凄く恥ずかしかったけど、ちゃんと言う事が出来た。
そうしたら、カイザーは本当に幸せそうに笑ってくれた。

身を屈めて、僕から柔らかい唇にキスをする。
そうしたら、つるりと舌が滑り込んできて、僕の口内を動き回る。
僕は必死でそれに応えるけど、すぐにボフンという音がしてカイザーは居なくなった。