SHO-GUN-GAME
僕が家に帰る時間になっても銀さんが万事屋に帰って来ないから。
それじゃあ、神楽ちゃんが1人になっちゃうから。
だから僕は、神楽ちゃんと2人でどこかでツブれているであろう駄目オヤジを探しに行った。
銀さんの行動なんて、僕ら2人にかかったらチョロイもんで。僕らはすぐに銀さんを見つける事が出来た。
でも、今日は日が悪かったのか…それともやっぱり子供はこんなガラの悪い所に来ちゃ駄目だよ、って事なのか…
僕は今、とんでもない出来事に巻き込まれている…って言うか、ど真ん中に居る…
店員さんに案内されてその部屋に僕らが踏み込んだ瞬間、まず目が合った神楽ちゃんと沖田さんが喧嘩を始めた。
それを止めようとした僕に、酔っぱらった銀さんが抱き付いて来て、銀さんからなんとか逃れた所で桂さんと坂本さんと長谷川さんに絡まれて頭を撫でくり回されて、それをやっと抜けたら土方さんになんか黄色いモノ(多分マヨネーズが大量にかかった何か)を口に突っ込まれて、慌てた近藤さんに貰ったジュースでなんとか飲み下したら、いつの間にか高杉さんの膝の上に乗せられてて、叫ぼうとしたら神威さんの頭が僕の太股の上に乗ってきて逃げられなくなって、そしたら喧嘩してた筈の神楽ちゃんと沖田さんが神威さんまで巻き込んで、その隙に高杉さんの膝の上から山崎さんが救い出してくれたと思ったら土方さんの愚痴を延々と僕にこぼし始めた…
一体どうしたらこんな事になるんだろう…
どんな偶然が重なったら、こんなメンバー集まるの…?
何で、銀さん達と真選組と攘夷志士と春雨が居酒屋の個室で仲良くお酒呑んでるんだよ!?
いくらプライベートだからって、おかしいじゃん!
ちゃんと仕事しろよ公務員!!テロリストを逮捕しろよ!!
何?お互いへべれけだから何も分からないの?認識できないの!?
そんな事になるの!?恐いなお酒って…!!
こんな面倒に巻き込まれるなら、なんかもう、銀さんは好きに呑ませておけば良いんじゃないかな?
坂本さんガ居るからツケにはならないだろうしね。
僕と神楽ちゃんは家に帰ろう。
うん、それが良い。
このままここに居たって嫌な予感しかしないよ。
そんな考えに至った僕は、神楽ちゃんを回収するべく彼女に声を掛けた。
「神楽ちゃん、喧嘩しないで。ほら、僕らはもう…」
「ショーグン様げぇぇぇーむ!」
そう高らかに宣言するのは銀さんで、割り箸入れを改良した物を高々と掲げている。
…こんなおっさんばっかりの呑み会でやって楽しいか?ソレ…普通は女の子がいる飲み会でやるもんなんじゃないかな…?
まぁ、僕には関係ないや。さっさと帰って…
「さ、神楽ちゃん帰…」
僕が神楽ちゃんを振り返ると、いち早く割り箸を引いて銀さんと同じポーズでドヤ顔をしている姿が目に飛び込んできた。
「えぇぇぇぇ!?何やってんの神楽ちゃん!?」
「新八も早く引くアルヨ。これでコイツラ跪かせてやんヨ。」
「ちょ!そんなの…」
「そうだぞ〜?早く引けよ新八ぃ〜あと引いて無いのオマエだけだぞ〜?」
「えぇぇっ!?」
辺りを見回すと、いつの間にか酔っぱらい達は皆箸を高々と掲げていた…
え…?コレ、僕も参加しなきゃいけない感じ…?
全員の期待に満ち満ちた視線に耐えきれなくて、僕は残ってた1本をそっと手に取る。
それが、僕の地獄の始まりだった…
◆
「ホラホラ、5番さーん、将軍様にアーンしてヨ!」
「うっ…はい…あーん…」
猫耳をつけて、メイド服を着て、フリフリエプロンをつけて…僕は今、神威さんの口にプリンを運んでいる…
なんだよこの罰ゲーム…
なんで僕が酔っぱらいの悪ふざけに付き合ってやらなきゃいけないんだよ!!
そう、僕はここまでかというほど運が悪いらしく、ここまで殆ど将軍様の言う事をきいている。
それも、おかしな命令の時ばかり…
初めは山崎さんが将軍で、どこから取り出したのかフリフリエプロンをつけるよう命令した。
それが、運悪く僕だった。
次に長谷川さんが将軍様になって、これまたどこから取り出したのかメイド服に着替えるように命令した。
それも運悪く僕だった。
その次は土方さんで、再びどこからか猫耳を取り出してつけるように命令した。
またまた運悪く、それまでもが僕だった。
その後は悪ノリした近藤さんが長谷川さんをパンイチにしたけど…
すぐ又坂本さんが3番が10番のパンツをかぶれと命令して…今、僕のパンツを桂さんが普通にかぶっている…
そんな事が続いて、僕は今男子として恐ろしい格好をさせられている。
もっ…もうこれ以上傷を広げたく無い!
なんとか…なんとか帰れるように…
「次いくアルー!将軍様だーれだ?」
僕の都合なんか全く気にしないで、間髪入れずに神楽ちゃんがそう叫ぶと、全員が我先にと箸を取る。
だっ…駄目だ!
僕が口をはさむ暇が無い!!
「ワタシが将軍ネ!」
嬉しそうに胸を張る神楽ちゃん。
そう言えばまだ将軍様になってなかったっけ…
よし、これが終わったらスッと帰ろう!スッと!!
「9番!将軍様に膝枕するヨロシ!」
あれ…?
跪かせるんじゃないのか…って…あ、僕だ9番。
「はい、僕9番だよ。おいで神楽ちゃん。」
僕が手招きすると、にこにこ笑った神楽ちゃんが駆け寄ってきて僕の太股に頭を乗せる。
さ、僕らは帰って…
「将軍様だぁ〜れだ!」
銀さんの掛け声にすぐに神楽ちゃんが反応して、全員が割り箸を持って僕を見る。
「新八ぃ!ワタシがオマエの分も取ってきたヨー!」
「え…そんな僕もう…」
僕が反論する暇も与えずに、その後もどんどん将軍様ゲームは進んでいって…
「6番、将軍にチューするぜよ。」
「3番は着物の肩を落としてくれ。色っぽくな。」
「7番…ラッキーセブンだネ。じゃぁおっぱい吸わせてヨ。」
「1番か。恥ずかしそうにスカート捲って見せてよ。」
「5番抱きしめてくんないかなー?」
「8番ベロチューだ。」
「1番お妙さーん!」
な…んで…僕ばっかり…?
それも…罰ゲームより酷いよ…こんな命令…嫌がらせにしたって程がある…
僕…この人達に何かしたのか…?
もう…イヤ…だ…
なんとか逃れたいけど…酔っぱらい達はいつの間にか僕を取り囲んでて逃げ場が無い…
神楽ちゃんは疲れたのか眠っちゃってるし…銀さんはノリノリだ…
いつもはしっかりしてる土方さんもおかしいし…誰か…誰か…!
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