2人のり(3Z編)


「よーっし、休憩にするぜよ。1年ー、奢ってやるきに買い出しに行ってこぉーーーい!!」

坂本先輩の一言で、1年買い出し部隊が結成される事になりました。
1年皆でじゃんけんして、行ってくるはペットボトル40本の買い出し。
皆練習でバテバテで、1歩も歩きたくない、その上着替えなきゃいけないとなると、自然とじゃんけんに気合いが入る。

…お約束と言うかなんと言うか、僕が負けて買い出しに行く事になった。

「ちょっとぉ!流石に僕1人でなんて無理ですよっ!!誰か一緒に行って下さいよぉっ!!」

僕が叫ぶと、全員が目をそらす。

「近藤君ー、姉上の写真あげますからぁ!」

うっ…と言ってこっちを見るけど、僕が笑うと目を逸らす。
ちっ…ダメか…姉上の写真を使ってもダメなんて、よっぽど疲れてるんだな…

僕の目の前を急がしそうに山崎君が走って行く。

「山崎くーん、助けてよぉー…」

「ごっ…ごめんね新八君…僕、高杉先輩に急ぎの用を頼まれてて…」

僕の目の前を走っていた山崎君が、すまなそうな顔でそのまま駆け抜けていく。
…山崎君…声掛けて逆にごめん…

他は………無理だ…………

…あー、分ったよっ!行ってくるよ!行って来れば良いんだろっ!!
全く、皆ワガママだなぁ!もう!!

僕がトボトボと近くのコンビニまで歩いていると、後ろからチリンチリンと自転車のベルが鳴る

「お嬢さーん、乗ってかねぇ?」

僕の後ろからふざけた声が掛かる。この声は…

「…沖田君……何か用ですか…?」

僕がイヤな顔で振り向くと、にっこり笑った沖田君が自転車に跨って手を振っている。

「志村君が買い出しに行った、って聞いたんで手伝いに来てやったってぇのに…何でぃ、そのタイド。」

「サボリの人に言われたくありません!コンビニ近いし、これぐらい大丈夫です!」

「その金額じゃ、コンビニじゃ全員分は買えねぇだろい?」

「えっ!?だって5000円持ってきてますよ?40人分買えるじゃないですか。」

「…コンビニじゃペット、150円でさぁ。」

「ひゃくごじゅ…!?ええっ!?100円じゃないの!?」

僕がびっくりして沖田君に詰め寄ると、横を向いてニヤリと笑う。

「大江戸ストアまでは結構ありやすよねー?折角チャリ出してやろうと思ったのに、そんな事言われるんなら帰りやしょうかねー。」

「すっ…すみません!沖田君って優しいなー!…手伝って下さい………」

僕が大慌てで沖田君の制服の腕を掴むと、ニヤーっと笑った沖田君が、クイクイと自転車の後ろを指さす。

「んじゃ、乗ってきなせぇ。しっかり掴まってねぇと振り落としやすぜ?」

僕が座るか座らないかのうちに、沖田君がグイ、と自転車をこぎ出す。

ギャァァァァァァ―――――ッ!!

ほっ…本当に振り落とされるっ!!
沖田君は、僕なんか乗って無いみたいなイキオイで自転車をこいで行く。
何だコノ体力馬鹿っ!?
僕が沖田君のお腹に手を回してぎゅうと掴まると、上からへへっと声が聞こえる。

わっ…笑ってる…笑ってやがるよ、このドSっ!!!!!

どーせヘタレ、とか思ってんだろっ、コンチクショウ!!!!
でも、この手を離したら多分振り落とされる…癪だけど離すもんかっ…
僕はせめてもの抵抗で、力一杯お腹を締め付けた。
今度は上から、ごふっ…とか声が聞こえる。

ザマーミヤガレ。

僕はちょっとご機嫌になって、僕じゃ到底出せないスピードを楽しむことにした。

END