宿に帰って温泉に入ってご飯を食べる。
ご飯は、海の幸がてんこ盛りの豪華な料理だった。
大満足のままぼーっとテレビを見ていると、気が付けば近藤君と姉上が居なくて…
「あっ!姉上と近藤君がっ!?」
僕が慌てて立ちあがろうとすると、総悟君が僕の手を掴む。
「野暮は言いっこ無しですぜ?姐さんからの伝言。邪魔したら、分ってるわよね?だそうでさぁ…」
心なしか、総悟君の顔が青い…
「姉上ぇぇぇぇぇぇぇぇ…」
僕がオロオロしていると、総悟君が向かい合って僕の肩を掴む。
「姐さんの事より、自分の心配しなせぇ。」
「えっ?」
視界がぼやけて、ことり、と音がする。
そのまま総悟君の顔が近付いてきて、僕の唇に、何か温かくて柔らかいものが当たる。
…きっ…キス…されてる…!?
そう思った瞬間、ぐっと押されて、そっと床に寝かされる。
ちょっ…!?近藤君と姉上…帰ってくるよ…っ!!…でも………
「…キス…だけですからね…?」
「へいへい。」
総悟君がニヤリと笑って、深く口付けてくる。
柔らかい舌が僕の中で暴れる。
暫く髪や腕を撫でていた手が、浴衣の合わせと裾を割って入ってくる…ってちょっとぉ!?
「ダメだって言ってるでしょうがっ!」
「そんなヒドイでさぁ…そんな事ァ俺の息子も新八の息子も許さねぇよ…」
総悟君が悲しい顔をして、僕の手を総悟君の股間に引っ張っていく。
うっ…やばいのは…僕だって分かってるよっ……でも…
「ダメ…だって…言って…る…のに……ん…やっ…」
「総悟ぉ!花火…スマン!」
僕のパンチが総悟君の顔面にヒットするのと、近藤君と姉上が部屋に入ってくるのが一緒だった。
「はっ…花火!良いですね、花火!!…ってアンタ何してんですかっ!?」
姉上の目を隠すためか、近藤君が姉上を抱きしめる。
何か他に方法があんでしょうがっ!姉上も、何ぽーっと頬赤らめてんだっ!!
僕が総悟君をどけて立ちあがると、帯がぱらりと落ちて、浴衣が全開になる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?いつの間にっ!?アンタ何してくれてんですかっ!!」
僕がバシバシと総悟君を叩いていると、はっと我に返った近藤君が、ばっ!と離れる。
「すみません、妙さん!つい!」
「いいえ、私こそ…」
…ちくしょう、何かラブラブじゃないかっ…姉上…頬なんか染めちゃってさ…すっごい可愛い…
なんとか落ち着いて、砂浜に出て花火をやる。
2人で近くのコンビニまで行って買ってきてくれたという花火は凄く綺麗で…
花火の明りに浮かぶ姉上の笑顔は凄く嬉しそうで、幸せそうで…楽しそうに花火をする2人を邪魔するなんて、出来ないよ…
僕が大きなため息をついていると、さっきまで花火を持って走り回ってた総悟君が寄ってきて、僕の頭をポンポンと叩く。
「どうしたぃ、新八ィ。そろそろ姉離れして俺ん所に来なせぇ。」
「…姉離れはしないけど…総悟君の所には行くよ?」
僕が総悟君の肩に、ことり、と頭を置くと、総悟君が固まった。
「しっ…新八ィ…大胆ですねぃ…」
くすくすくすくす…
「ホント、打たれ弱いんだから…」
「なんでぃ…そんな事言ってっと、ココでさっきの続きしやすぜ?」
総悟君が、僕の顎をくいっと上げる。
そぉっと顔が近付いてくるから、ゆっくりと目を閉じる。
「いい加減にしろや、バカップル。」
僕らの間に火のついた花火が差し込まれる。
「うわぁ―――っ!?姉上っ!?何無茶をっ!?」
「たっ…妙さんっ!!あぶないあぶないっ!!!」
「姐さん、恋人達の邪魔は止めて下せぇ。近藤さんけしかけやすから。」
「そっ…そんな事してくれなくても結構です!別に羨ましくなんかないものっ!」
姉上が真っ赤だ…それを見た近藤君も真っ赤だ…じゅんじょーかっぷる…
「そっ…そろそろ帰ろうか。花火のゴミは全部拾うんだぞ?」
近藤君が照れ隠しでてきぱきと花火を拾い始める。姉上もそれに続く。暗い中、途中手がふれあったりして、ごめんなさい、とか声が聞こえる。
キレイに花火を拾って、焚火で燃やしてしまう。(※本当は危険です。止めやしょう。)
宿に帰ろうと歩きだすと、総悟君が僕の手を引っ張って止まる。
「近藤さん、先帰ってて下せぇ。俺と新八はもう少ししっぽりしていきまさぁ。」
「そっ…総悟っ!?」
「大丈夫ですよ?イザとなったら僕の拳が唸りますから。」
僕がにっこり笑うと、近藤君と姉上が何度も振り返りながら宿へ帰る。
あ、手を繋いだ…2人とも、顔真っ赤だよっ…
「姉離れしやしたね。」
「ま、姉上のあんな顔見たらしょうがないですよ。もう、泣きながら赤飯製造機になりますよ。」
僕が苦笑すると、総悟君が手を繋ぐ。
「じゃぁ、早速俺んトコ来なせぇ。俺だけの新八になりなせぇ。」
にっこり笑って僕の顔を覗き込む。
くすっ…
「どうしようかなぁ…」
「なりなせぇ。俺ァ新八の事大切にしやすぜ?」
「じゃぁ…総悟君も、僕だけの総悟君になって下さいね?」
そう言って笑うと、ちゅっ、とキスをくれた。
「俺ァとっくに新八だけのものでさぁ。」
にこにこ笑ってる総悟君にぎゅうと抱きつくと、あわあわと慌てだす。
「じゃぁ、僕も総悟君だけのものになってあげます。」
「じゃっ…じゃぁ早速帰ってさっきの続きを…」
「調子に乗らない!」
僕がぺしりと総悟君の頭を叩くと、ぷぅと膨れて僕の手を引いて歩きだす。
満点の星空の下、繋ぐ手と手が確かなもので…
僕はその手をしっかり掴んで、離さないようにしていた。
END
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