発動。
こんにちは、志村新八です。
ヤバイです。
ここの所本気で仕事が無かったんで、万事屋の家計が火の車を通り越して火だるまです。もうなんとか仕事を見付けないと、皆干からびますっ!
「銀さん!なんとか仕事を見付けないと、死にますよ僕らっ!もうパンの耳すら買えませんよっ!!!」
「あ〜暑い…動きたくない…」
僕が怒鳴りつけてもなんのその、銀さんはぐた―っとしたまま社長席から動く気配も無い。
「そのままココで干からびろっ!神楽ちゃんっ!僕らだけでも何とかしないと…」
「定春ぅ…ワタシもう疲れたヨ…ねむいよ…ねむいんだ…」
「ギャァ―――ッ!連れてかれるっ!沢山の羽が生えた何かに神楽ちゃん連れてかれるっ!!銀さんっっっ!!!!!」
未だにぐだ――っとしている銀さんの胸倉を捕まえて前後に揺さぶると、うぇ―――、とかうへぇ―とかいう声がする。
「そうだな…夏だし…オバケ退治しま〜す、なんて言ったら案外ひっかかるヤツいんじゃね?」
「そんなバカ居るかぁぁぁぁぁぁぁ―――――っ!!!!」
「いやぁ、分かんないよ〜?」
僕に捕まれたまま、銀さんがニヤリと笑う。いくら暑いからって、そうそうそんなバカな話に引っ掛かる人が居る訳無いよ!
なんだよ、オバケ退治って!
「そうアル!何事もやらずにすぐにアキラメルのは最近の若者の悪い所ネ!」
…面白い遊びを見つけた神楽ちゃんはノリノリだ…まぁ、やってみても良いか…
「ところで銀さん、除霊なんて出来るんですか?」
「バッカお前、霊なんている訳ないだろ〜が。雰囲気だよ、雰囲気。」
早速2人は変な衣装に着替えていて、もうヤル気満々だ…僕も変な衣装に着替えさせられて、街に出る。
…と、すぐにバカが引っ掛かった…………アリなんだ、コレ。アリなんだ…………
「すみませ―ん、あなた方霊媒師の方々ですか?」
…山崎さん…真選組って、バカの集まりですか………?
「拝み屋ですが、何かお困りかな?」
銀さんがノリノリで答える。後でバレても知らないよ?僕は…
思いっきり真面目な顔で山崎さんが話し出す。…本気でオバケ退治してくれ、とか言い出だすのかな…?
「実は…」
ヤバイ、本気だ…
そうして僕らはバカの集団の居る真選組屯所に向かった…
◆
稲山さんが怪談をやった次の日から、隊士達が『赤い着物の女を見た』とか言い出しやがった。
『赤い着物の女』を見たってェヤツラは必ず皆寝込みやがって、隊士の半分ぐらいが使い物にならなくなりやがった。おかげで仕事をサボる訳にもいかず、こちとらァいい迷惑だぜ。
困った近藤さんが、山崎に拝み屋だか霊媒師だかを探しに行かせたが、居るもんだねェ、胡散臭いヤツラが。おまけにコイツラどっかで見たような…特に眼鏡の坊さんの格好のヤツ。
…何かこう、ギュっ、としたくなるようなならないような…変な気分だぜ。
なんだかんだ話を聞いてるうちにヤツラが暴れ出して、変な衣装が脱げた。その姿は…
…新八達万事屋じゃねェですかィ…
土方さんのめーれーで、のした3人を縄で縛り上げて木に吊るす。
…なんでィ…このゾクゾクする感じは。チャイナや旦那を縛り上げた時には何も感じなかったのに、新八を縛り上げた時だけ変だぜ…俺を見上げる潤んだ目とか、急に柔かく感じる体が…何かやべェ…もっとイジメてやりてェ…
まぁそう言う訳にもいかねェし、そうそうこいつらに構ってる暇も無いんで事情だけ聞き出してすぐに降ろしてやる。
新八だけまだ吊るしときてぇが、そうもしてらんねェし…
まぁ、又今度…
◆
僕らが木から降ろされてすぐに、神楽ちゃんが近藤さんに付き添ってトイレに行った。
はぁ、殺されるかと思った…ってか、沖田さん、なんでそんなに残念そうなんだよっ?!こっちばっかり見ないでくれないかな!
サディスティック星から来た皇子だって土方さん言ってたよな…やっぱドSだったんだ、アノ人やっぱドSだったんだ!
この騒動の話を皆さんから聞いてみると、『赤い着物の女』を見た隊士の方達が寝込んでしまっていると言う。
そう言えば…
「僕が通っていた寺子屋でね、一時そんな怪談が流行ったんですよ…」
僕がその怪談の話をしていると、野太い男の悲鳴が響き渡った。厠の方だ…近藤さんっ!?
僕らが慌てて厠に走ると、近藤さんが頭から便器に突っ込んでいた…なんで…?
慌てて引き上げて部屋で休ませると。近藤さんがうなされ始めた。
…なるほどこうなるのか…怪談とは違うな…
その近藤さんの首を絞めて沖田さんがオトす。
イヤイヤイヤイヤイヤ、もう気絶してるから。死んじゃうから、近藤さん。
僕ら万事屋は、もうここに居てもどうしようも無いんで帰ろうとすると、銀さんが僕と神楽ちゃんの手をギュッ、と握ってきた。
…何か汗ばんでる…まさか銀さん…恐いんじゃ………
沖田さんもソウ思ったのか、銀さんをからかって驚かすと、銀さんが押入れに突っ込んだ。
…恐いんだ………
ニヤリと笑った沖田さんが銀さんを更にからかおうと土方さんに話を振ると、土方さんは頭からツボに突っ込んでいた。
…恐いんだ…………マダオめ………
マダオ達がムー大陸とかマヨネーズ王国とかボケをかましていると、2人の後ろの障子が、すぅっ、と開いた。
……………………!?
「なんだオイ」
「驚かそうたってムダだぜ?同じ手は食うかよ。だから子供は…」
そう言う2人の後ろに『赤い着物の女』…
ギャ―――っ!!居たっ!!!本当に居たんだっ!!!!!!!
僕・沖田さん・神楽ちゃんが走って逃げると、後ろで ドォォォ―ン、と音がして、大人2人が『赤い着物の女』を背追ってくる。
ギャ―――――ッ!来るな、来るなっ!コッチに来るなぁ―――――っ!!!
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