まじっく・まっしゅるーむ



散々だったキノコ狩りの後にぶどう狩りをして僕らが万事屋に帰り着いた頃には、外はもう真っ暗で、丁度夕飯の時間になっていた。
ブドウはおかずにはならないけど、なんか食べられそうなキノコは採ってきたから今日の晩ごはんはキノコ鍋にしようと思っています!お鍋は良いよねー!汁でお腹も膨れるし、冷蔵庫の残り物何でも入れられるし!

僕が冷蔵庫に有るモノを根こそぎ漁っていると、後ろからもうすっかり聞きなれた声がする。

「よぅ、新八ィ〜、松茸は採れたかィ?」

「あ、沖田さん。採れる訳無いじゃないですか。」

想った通り真撰組の隊服を着込んだ沖田さんが、スーパーの袋を抱えてズカズカと万事屋の台所に入ってくる。

「ちょっと!アンタまたサボリですかっ!?もぅ、万事屋にサボリに来るの止めてもらえません?沖田さんがサボりに来るとアンタを呼びに来た、とか言って土方さんや山崎さんまで来るんですよ?」

僕が冷たい目で沖田さんを睨むと、うっ、と怯んだ沖田さんが、ずいっとスーパーの袋を差し出す。

「松茸はおろか、茸でさえどうせ採れなかったんだろィ?茸鍋の材料買ってきやした。鍋作って下せェ!それに俺ァ今日は早番でィ。土方の野郎もザキも遅番だから来ねェよ…」

おそるおそる、って感じで下から上目遣いで僕を見る。
なっ…僕そんな怖い顔したかっ!?何その表情っ!!まるで僕が沖田さんを苛めてるみたいじゃん!

…ちょっと可愛いじゃん…って、何考えてんの?僕っ!?

怒った表情を作ったままスーパーの袋を受け取って中身を出していくと、キノコは勿論、豆腐にネギに白菜にしらたきに…にっ…肉!鶏肉と豚肉が沢山っ…!!すっ…凄い豪華………

「しっ…仕方ないですねっ…でも、僕らだってキノコ採れたんですよっ?今日は元々キノコ鍋の予定だったんですから!…手土産持ってきてくれたんだし…鍋は人数多い方が美味しいですしね!沖田さんも食べていくんですよ!」

僕が言うと、満面の笑顔になった沖田さんが上着を脱いで腕まくりする。

「じゃあ俺も手伝いまさぁ!包丁使いは得意でィ!」

手を洗って包丁を構えた沖田さんがまな板の前に立つんで、野菜を洗って渡すとホントに綺麗に野菜を切ってくれる。キノコは布巾で拭いて渡すと、良い感じの大きさに切り分けてくれる。わ…ちゃんとわたつきも取ってくれてる…本当に上手いや…

材料を全部用意してお鍋に入れて、台所で火を通して味付けして茶の間のコンロに持っていく。すると、待ちかねたように銀さんと神楽ちゃんが食器を並べてくれてる。

「いやぁ、沖田君悪いね〜」

「ドSにしちゃ良い仕事したアル。」

…あぁ…沖田さんがすんなり台所に来たのは、この大量の肉のおかげだったんだ…

「「「「いっただっきま〜す!」」」」

皆で囲むお鍋は美味しいなぁ!
肉の奪い合いには負けたけど…ちょっとした隙に沖田さんが僕の取り皿にお肉を入れてくれた。
…お鍋の時は毎回沖田さん呼ぼうかな…
採ってきたキノコも美味しい!色んなキノコ食べたいけど…自分の前に有るのしか食べられないや…

何回か具を継ぎ足して、すっかり空になった鍋を台所に片付けて、お茶を入れて居間に戻ると、銀さんと神楽ちゃんはソファですっかり眠りこけてた。

「ちょっと2人ともっ!寝るならちゃんと布団で寝て下さい!!」

僕が2人を揺すっても、全然起きる気配が無い。
ってか、2人とも目を開けたまま寝てるよ…ちょっと気持ち悪っ…
どうにもならないんで、沖田さんに手伝ってもらって2人を布団に寝かせる。めんどくさいから銀さんの部屋に2人とも寝かせちゃったけ、。神楽ちゃんも起きたら自分で戻るでしょ…


「すみません、2人ともだらしなくって…」

僕が沖田さんにお茶を出しながら謝ると、沖田さんが爽やかに微笑む。

「いえ、お2人とも疲れていらっしゃったんでしょう。」


………沖田さん………?


「えっ!?沖田さん!?どうかしたんですかっ!?」

「何がですか?僕、どこかおかしいですか?」

沖田さんが怪訝そうな顔でぐるぐると周りを見る。

「ぼっ…僕ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

なっ…イヤ、おかしいっておかしいおかしい!沖田さんが僕ぅぅぅぅ!?その上何か言葉遣いもおかしいよ!それに何?その爽やかな笑顔…

爽やかな……笑顔………


どくん…


改めて思う事でもないけど…沖田さんって…カッコ良いよね…キレイナカオ………

「新八君?どうかしましたか?顔、赤いですよ?」

沖田さんの顔が近付いてくる…すっごく心配そう…で…優しい…
そっと僕の頬に触れてくれるんで、その手に擦り寄る…何だか凄く体が熱い…

「しっ…新八君…?」

「おきたさ…んっ…なんだか…あつい…です…」

「えっ!?…新八君…お酒呑みましたか…?」

「のんで…ないです…だって…っ…おさけなんて…ウチにありませんっ…っ…」

僕が苦しくて沖田さんにぎゅうと縋りつくと、慌てて支えてくれる。
あ…なんだか冷たくてキモチイイ…硬さも丁度良い…
そのままぎゅっと抱き付くと、上で沖田さんがあわあわと慌てだす。

「しっ…新八君!駄目ですこんなふしだらな事!結婚前の僕等がしてはいけないです!」

…沖田さん煩い…

僕があわあわとまだ何か言ってる口を、ちゅっ、とキスで塞ぐ。

あ、真っ赤になって大人しくなった…
えへへ…可愛い…

もう1回、ちゅっと唇を塞ぐと、固まっていた沖田さんが動き出す。

「しっ…新八君大変です!きっ…きっすしてしまうなんて…僕、責任とります!ちゃんと新八君をお嫁さんにしますから!安心して下さい!僕、そこそこ稼いでますから新八君を苦労させたりしませんから!」

…そんな事、どうでも良いのに…

「それより…あのね?僕勃っちゃった。えっちしよ?」

沖田さんの首に手を回して腰を擦りつけると、びくりと震えてぐいぐいと僕を押しのける。

「だっ…駄目です!そう言いう事は結婚するまでしちゃ駄目なんです!」

「やんっ…だってツライの…そーご僕の事キライ…?」

「すっ…好きです!僕が新八君の事嫌いな訳ないでしょう!でも駄目です!駄目ったら駄目です!」

「そーごのケチィ…」

僕がむぅ、と膨れて睨むと、真っ赤になって僕を見る。

「ケチィ、じゃないです!だから、婚前交渉は駄目です!結婚したら…一杯しますから…」

変なの、沖田さんのクセに…

「しっ…新八君!僕と結婚して下さい!きっ…きっすしてしまったんだし、男として責任を!」

…責任…?僕の事好きじゃないんだ…

「や。今えっちしてくんなきゃ結婚しないもん。」

「だから、それは駄目ですってば…」

「じゃ、結婚なんかしない。責任責任って、僕の事好きじゃないんでしょ?」

僕がふい、と視線をずらすと、がっちりと抱きしめられる。

「そんな事ないです!好きなんです!新八君とずっと一緒に居たいんです!えっ…えっちだって本当はしたいんです!でも…」

「じゃ、しよ?」

「だからっ!…困らせないで下さい…」

沖田さん泣きそう…何で…?でも、こんな顔嫌い…

「…じゃぁ…我慢する…でも、ぎゅってして?一緒に寝よ?」

「はいっ…!」

沖田さんがそっと僕を抱きしめてソファに横たわる。

…暖かい…

僕が目を閉じると、沖田さんがスッと離れて何処かへ行ってしまう…寂しい…

少しすると、部屋の電気が消えた。
あ、そう言えばつけっぱなしだった…

すぐに沖田さんがソファに戻ってきて、毛布を被せてくれる。

「風邪、ひくといけないから…」

そっと隣に入ってきて、ぎゅうと僕を抱きしめる。
僕は、もう沖田さんが離れられないように、ぎゅうと抱きしめる。
優しい匂いと暖かい体温に包まれて、すぅっと意識が遠退く…
大好き…優しい人………