闘う者は・・・



キノコ騒動があってから何か顔を合わせづらくて、ここ数日、僕は沖田さんには逢っていません。キノコの毒とはいえ、男の人相手にあんな事しちゃって…

僕は一体どんな顔して逢えば良いんだよ…っ!

沖田さんもここの所忙しいらしくて、万事屋に顔を出せないでいるみたいなんで丁度良いんだけど…ちょっと寂しい…って何がっ!?
でもあの時…プロポーズされて…何で僕、ヤじゃなかったのかなぁ…すっごく愛しくなって嬉しかった…

って!イヤイヤイヤイヤ、アレはキノコのせい!キノコのせい!!

そんな変な気持ちを吹き飛ばしたくって、今日は銀さんと神楽ちゃんを誘ってお通ちゃんに会いに来ました!
お通ちゃんは、あのスキャンダルで仕事をホされたんですが、今や歌って闘うアイドルとして再起したんです!なかなか強くって、白熱した試合を僕らに見せてくれるんです。流石だなぁ!
ほら、やっぱり僕は、お通ちゃんみたいな可愛い女の子が、好きなんだよね!
うんうん、沖田さんなんか何かの気の迷いだ!キノコのせいだ!!

「お通ちゃァァァん、いけェェェェェ!!」

僕ら親衛隊が熱い声援を送ると、それを見ていた銀さんがツッコむ。
…イヤ、確かに方向性は間違ってるかもしれないけど…
でも、お通ちゃんは歌ってるんだ。
どんな場所だろうと歌ってるんだよ!

僕が少し考えに浸っていると、リング上に何故か神楽ちゃんが居た。
…ちょっ…アレ、あからさまに試合の邪魔して…

会場から湧きあがるブーイング…

…僕…知らない人だ。

僕と銀さんが、バレないうちにそっと会場を後にしようとすると、通路の横から一際大きなブーイングの声が…
あれ…?この声…

「何やってんだァァ!ひっこめチャイナ娘ェ!!」

まっ…まさかね…こんな所にあの人がいる訳…
僕がこっそり声のした方を見ると、やっぱり沖田さん…
それも、目が合っちゃったよ…見てる…ものっそ見てる…

「…どうも…」

「…おう…」

…気まずい…

「寺門さんが出るって聞いたんでね…もしかしたら逢えるんじゃないかと思いやした…」

「えっ…?」

「…イヤ、旦那に用事が有りやして…」

…銀さん…?…僕じゃ…ないんだ………
なんで…こんなに寂しいんだ…?…僕…

沖田さんが席から抜け出してきて場所を移すと、摘み出された神楽ちゃんも合流する。
ドSな観戦理由を呆れながら聞いていると、沖田さんがもっと面白い格闘技をやっている所が有ると言う。

「ヒマならちょいとつき合いませんか?」


言われるまま沖田さんに連れられて、着いた所はいかにも治安の悪そうなスラム街で…
変なモノ売ってる露店とか、変な格好の天人の若者に絡む神楽ちゃんを止めるのに必死で、僕等は沖田さんと銀さんに置いて行かれてしまった…

「神楽ちゃん!こんな所で迷ったら、僕、帰り道分かんないよっ!」

「シンパイ無いネ。新八はワタシが守ってやるヨ!」

「や、そういう問題じゃなくて!!」

「新八ィ…何やってんでィ!いきなりいなくなってんじゃねェや!」

僕等が言いあってると、怒った顔の沖田さんが息を切らせて駆け寄ってくる。
そして、僕の手を掴んで、ずんずんと歩いていく…

「こんなトコで俺から離れてんじゃねェよ。ったく、駄眼鏡だな、新八は。」

「なっ…!」

僕が反論するよりも先に、神楽ちゃんが沖田さんに攻撃する。
沖田さんが僕を盾にすると、神楽ちゃんの蹴りがピタリと止まる…ぎっ…ギリギリだ!ギリギリだよっ!!

「こんな所で無駄な体力使ってんじゃねェよ、バカチャイナ。ココじゃァ取り囲まれたら最後、何人相手にしなきゃいけねェか判らねェんだぜ?」

…沖田さんの目がマジだ…

思わず、掴んでくれてた手をギュッと握り返して、反対の手で神楽ちゃんの手を握る。
先行していた銀さんに追いついて、僕等が最終的に着いた場所は…


「煉獄関…」


…な…にが…おこって…

「ここで行われているのは…正真正銘の殺し合いでさァ。」

本当の…殺し合いをしている場所…?

どくん…

殺し合い…?アノ人達は…何でそんな事を…?
気持ち悪い…

万事屋は、皆がそう思ってたのか、神楽ちゃんが沖田さんに掴みかかる。

「胸クソ悪いモン見せやがって!」

「明らかに違法じゃないですか、沖田さんアンタそれでも役人ですか?」

沖田さんが僕からすっと目を逸らして、銀さんを見る。

「役人だからこそ手が出せねェ…」

なんで銀さんに話しかけるんだよ…今話してたのは、僕じゃんか…
いっつも煩い位に僕に話しかけるのに…なんだよ、僕は無視かよ!…好きだって…言ったのに…本気だって言ったのにっ!!
僕がその気になったら引くんだ。
イヤ、僕だってそんな気無いねっ!アレは全部キノコのせいだからねっ!!

僕がぐるぐる考えてる間に、沖田さんは万事屋に依頼をしたみたいだった。
この闘技場を…潰すつもりなの…?
いつもに無く真面目じゃん…そんな真剣な顔…見た事無いよ…
…なっ…んで…僕はドキドキしてるんだよっ!おかしいだろ!?まだキノコの毒…抜けきって無いの…?

僕ら万事屋ははうだうだしたまま闘技場を後にする。
沖田さんはまだやる事が有るからって、ソコに残った。

銀さんは…この依頼、受けるのかなぁ…?受けるんだろうな…
だって、沖田さんに言われた、鬼道丸、って人の後付けてるし…

「ああ見えて直参ですから、報酬も期待できるかも…」

あぁ、これは言い訳だ。
本当は僕、もう少し沖田さんと一緒の仕事がしたいだけなのかも…
僕の事見てくれなくても…僕の事無視しても…

なんで…?

うん、きっと今まで散々振り回したクセに、こんな簡単に僕の事無視するからだ!理由が知りたいだけだ、きっと…
だって有り得ない。沖田さんは男の人だもん。僕だって男だし。


鬼道丸さんを追いかけて着いた先は古びたお寺で…子供達が沢山遊んでいる場所だった。
こっそり覗いた銀さんを襲ったのは、そのお寺の住職さんで…鬼道丸さんだった。
話していると、とても闘技場で人殺しをしている人とは思えない人で…僕はどうして良いか分からなくなってしまった。


翌日、銀さんは沖田さんに呼び出されたまま帰ってこなかった。
様子を見に行った神楽ちゃんが、銀さんが土方さんに捕まったと教えてくれた。

…仕方ない、僕と神楽ちゃんだけでも動くか…

捕まる前に銀さんが言ってた通り、神楽ちゃんと2人で鬼道丸さんを見張っていると、ちょっとした隙に見つかってしまった。
彼は、子供たちと一緒に江戸を離れて、何処か遠くで静かに暮らすつもりだと言った。
うん…それが良いかも…僕等が止める事はないよね…
笑って見送ろうとしていると、そこに煉獄関の刺客がやってきた!
僕と神楽ちゃんが足止めをしている間に、鬼道丸さんと子供達には逃げて貰った。

僕だって…やる時はやるんだ!!

神楽ちゃんと2人で刺客を殲滅する。
皆…無事に逃げきったよね…?幸せに…なるといいな…