記憶の枝



姉上が僕を巻き込んだアノ騒動から1か月。
沖田さんが中々非番を貰えなくって、未だにデートのお誘いは無い。
その上町で偶然出逢っても、必ず土方さんが居たり、神楽ちゃんが居たりする。
たまたまその2人が居なくって、沖田さんと2人っきり…と思っても、何処からか山崎さんが出て来て人の良さそうな笑顔で僕に話しかけてくる…

山崎さんってもしかしてストーカーしてんじゃね?って思うぐらい良いタイミングなんだ…
…もしかしたら僕の気持ち…皆にバレてんのかなぁ…?
だから邪魔してくるのかな…?

そんな状態でずっときてるから、告白も出来てないし、あんまりちゃんとお話も出来てない。
いつまでもそんなまんまだから僕の気持ちは爆発寸前で…
もういっそ、屯所に乗り込んでいって告白しちゃおうか…とまで思い始めてしまった…

流石にね…そんな事は出来ないよね…
何考えてるんだろ、僕…


そんな事を考えていたら、家の電話が鳴った。
その電話は僕が待ち望んでた電話で…

「新八くん、お待たせしやした!やっと明後日非番をもぎ取りやしたぜィ!!デートしやしょうぜ!デート!!」

「はいっ!すごく…待ってました…」

「すいやせん、土方がなんだかんだ言って俺の非番を伸ばし伸ばしにしやがって…近藤さんに頼んで、やっと貰えやした!」

そうか、土方さんが邪魔してたのか…マヨラーめ…

「お疲れ様でした。忘れてましたけど…僕、土方さんと山崎さんにも告白されてたんですよね…」

「あー、そういやァそうでしたねィ。ま、俺ァ負ける気有りやせんけど。」

沖田さん、電話の向こうできっと不敵な笑いを浮かべてるんだろうなぁ…ふふっ…

「あははっ、頑張って下さいね?」

何気なく僕が言うと、電話の向こうがしんとする…
あれ…僕何か間違えた…?

「…新八くん…俺を応援してくれるんですかィ…?」

「えっ…?…あのっ…」

僕…言えたんだっけ…?思わず言っちゃったんだっけ!?
でもでもっ!今度こそチャンス…

僕が勢い込んで受話器をきつく握ると、後ろからポン、と肩を叩かれる。

「新八ー!ドコ電話してるアルカ?神楽様がが遊びに来てやったヨ〜!」

「総ォ悟ォォォォォォォォォォー!テメェいつまでもサボってんじゃねぇぞ!!」

あ…両方の電話に邪魔が…
これ以上邪魔されないうちに、時間だけ決めて、慌てて電話を切る。
すると、すぐに神楽ちゃんが僕の腕に絡み付いてくる。

「…神楽ちゃん…ソレ…分かってやってる…?」

「は?新八何言ってるネ。電話終わったんならさっさとお茶出すヨロシ。お茶菓子も忘れんなヨ!」

…天然なのか…ある意味凄いや…

とりあえず言われたままにお茶とお茶菓子を出すと、にっこりと笑ってそれを食べ始める。
食べてる時と寝てる時は、可愛いのにねぇ…
ぽすぽすと頭を撫でると、嬉しそうに僕の手に擦り寄ってくる。
そう言えば、神楽ちゃんにも告白されたんだっけ、僕…
…でも…神楽ちゃんも今は食い気の方が強そうだし…もう少し、様子を見よう…


いよいよデートの当日。
僕が家で支度を済ませて沖田さんのお迎えを待っていると、電話が鳴った。
…何だろ…沖田さん寝坊したのかな…?

「はい、志村です。」

…その電話は…銀さんが事故に遭って、今病院で緊急手術を受けている、というお登勢さんからのものだった…
銀さん…?銀さん…が…?
少々の怪我ぐらいじゃ病院になんか行かないのに…手術だなんて…

銀さんが…死んじゃったら…どうしよう…

自然と体の力が抜けて、僕はその場に座り込んでしまった。
急いで病院に行かなきゃいけないのに…体が…動かない………


「新八ィー、迎えに来やした…っ、どうした!?」

電話の前に座り込む僕を見付けた沖田さんが、慌てて駆け寄ってくる。

「銀さ…銀さんが…銀さんがぁっ!」

沖田さんの姿を見て安心したのか、僕の頬をボロボロと涙がこぼれる。

「旦那がどうしたィ!しっかりしろっ!!」

そう言ってバシンと僕の頬を叩いて、ぎゅうと抱きしめてくれる…
見た目よりガッシリした背中に手を回して、ぎゅうと抱きつくと、凄く安心した…
でも、そのせいでもっと涙がこぼれる。

「…っく…銀さんが…車に轢かれて…今…緊急手術…って…どうしよう…銀さんが死んじゃったらどうしよう…っ!」

言葉にすると、もっと不安になる。
ガタガタと震える体を、沖田さんが尚一層強く抱きしめてくれる。

「アノ旦那が、んーな事で死ぬかよ。籠屋呼ぶから、一緒に病院に行くぜィ。」

そう言った沖田さんがどこかに電話して、僕を立たせて玄関まで連れて行ってくれる。
家の鍵もちゃんと閉めてくれて、やってきた籠に一緒に乗り込んでくれて、病院まで付き添ってくれる。
籠の中でもずっと手を握ってくれて…凄く安心した…