事情をもう一回初めから説明しながら、僕の家、恒道館道場に連れて行く。

家には姉上が居たので、姉上にも銀さんの事情を説明すると…
「私は覚えているのに、一方的に忘れられるなんて胸クソ悪いわ。何様?」
とか言いだした…あぁっ!姉上が銀さんに掴みかかったっ!
今の銀さんは初期のファミコン並に脆いんだから、ちょっとしたショックで又記憶飛んじゃうよっ!!

銀さんに掴みかかる姉上を止めようと僕が立ち上がると、銀さんが姉上の腕を掴んで止める。
いつもと違ってまともな事を言う銀さんは、目と眉毛も近くて何かキリッとしてて…カッコいい…
そんな銀さんだから、姉上も頬を染めて大人しくなった…って姉上ェェェェェェっ!?騙されないで下さいィィィ!その人は銀さんですゥゥゥ!
僕が姉上に突っ込みをいれると、突然コタツの中から近藤さんが出てくる。

…この人又ストーキングしてたのか…

でも、近藤さんが姉上にお土産だ、って差し出したドロドロに溶けたバーゲンダッシュに銀さんが反応して少しだけ元の銀さんに戻った!これは…
甘い物っ!甘い物だっ!!!

「姉上ェェェ!甘い物ですっ!!」

家中の甘い物を銀さんの元に集めようと、姉上にも声を掛けたのが間違いだった…
姉上が持ってきたのは、いつものように、卵焼きで…
無理矢理食べさせられた銀さんと、もっさもっさと食べてしまった近藤さんがバッタリと倒れて記憶を失った。

2人を布団に寝かせて看病していると、先に銀さんが目を覚ました。
このまま僕の家で療養して貰いたい気もするけど…やっぱり万事屋に戻った方が良いよな…
銀さんの体調も良さそうだったんで、神楽ちゃんと3人で万事屋に戻る事にした。
ゆっくり…いつも通りの生活をしていたら、きっと記憶、戻るよね…?僕らの事、思い出してくれるよね…?

「すみません、ご迷惑ばっかりおかけして…」

道すがら、銀さんが僕らにぺこりと頭を下げる。

「ちょっ…銀さん止めて下さいよっ!」

僕が慌てて手を振ると、その手を銀さんがぎゅっと握る。

「君は…何で僕にここまでしてくれるんですか…?もしかして…僕ら、恋人同士なんじゃ…」

「は?」

銀さんがいきなり変な事を言い出した。
やっぱり姉上の卵焼きは、破壊力が半端ないよ!

「ですから、僕と君はお付き合いしているのかなぁ、って…」

「や、僕、男なんで。」

僕がきっぱり言って手を離すと、銀さんが慌てて僕の手を握りなおす。
その勢いで、ずいっと顔も近付けてくる。

「僕も男ですけど!君を見ていると、何だか無性に愛しくて…」

「アンタもかァァァァァァっ!?銀さんは…銀さんだけは大丈夫だと思ったのに!僕の味方だと思ってたのにっ!!」

僕が握られていた手を払いのけて1mぐらい飛び退ると、銀さんがムッとした顔をする。

「も、って事は…他にも君を好きだと言う人が居ると言う事ですか…?」

怖い目をして僕に歩み寄る銀さんの前に、神楽ちゃんが立ち塞がってくれる。

「そうヨ、ワタシもネ。銀ちゃんはワタシを応援してくれてたネ!」

神楽ちゃんから闘気が立ちのぼる。
って!何で闘い!?

僕が神楽ちゃんの服を掴んで引っ張ると、神楽ちゃんが僕の方を向く。

「何ややこしくしてるの神楽ちゃんっ!あーもう、僕ちゃんと好きな人居ますからっ!両想いですからっ!」

僕がそう叫ぶと、銀さんがふふん、と笑う。

「でも君は16歳ですよね?結婚はしていないでしょう?まぁ、してても奪いますけど。」

なっ…何だこの人っ!?やる気の有る銀さんヤダっ!何か怖いっ!!

「なんて言われたって、僕の気持ちは変わらないですからっ!」

僕が万事屋に向かってスタスタと歩き始めると、銀さんと神楽ちゃんも着いてくる。

神楽ちゃん…急ににこにこし始めたけど…ごめんね…神楽ちゃんの事じゃないんだ…

「僕は諦めませんから。君の気持ち、変えてみせますよ。」

「諦めろっ!」

ふふん、と不敵に笑う銀さんはちょっとカッコいいけど…
でも僕は沖田さんが良いから!


そのまま銀さんを無視して万事屋に戻ると、何だか万事屋の前に人だかりが出来ていて…

何だ…?

僕らも皆が見ているように万事屋を見上げると、そこには宇宙船が刺さっていた…

「アッハッハッハッハッ、すみまっせ〜ん」

僕らの前を、高らかに笑いながら、坂本さんがお巡りさんに連れられていった…
又か…又あの人が…やらかしたのか…
宇宙旅行の時も、酷かったよなぁ…
僕がそんな事を考えながら呆然と万事屋を見上げていると、銀さんが静かに言う。

「記憶も住まいも失って、僕がこの世に生きてきた証はなくなってしまった…だから、万事屋はここで解散しましょう。」

えっ…?
解散……って………

僕がぼんやりと銀さんの顔を見上げると、にっこりと微笑みかけられる。

「新八君、僕は真人間になって君を迎えに来ますから。ちょっとだけ待ってて下さい。」

それだけ言って、もう振り向く事も無く、僕らの前から歩み去る…

えっ…?何が………?

「銀ちゃん!」

「銀さァァァんっ!」

僕らが叫んでも、銀さんはスタスタとどこかへ行ってしまった。
残された僕らは呆然として…日が暮れるまで、万事屋の前に立ち尽くしていた…


それから、神楽ちゃんと2人で僕の家に帰る。
もそもそとご飯を食べて、お風呂に入って、早めに布団に入った。

「…新八…銀ちゃん…もう帰って来ないアルか…?」

「そんな事無いよっ!きっと…きっと記憶が戻って、何でもなかったみたいな顔して万事屋に帰ってくるよっ!」

僕が布団から手を出して神楽ちゃんの手をギュっと握ると、神楽ちゃんも僕の手をギュっと握る。
そうしていると、ちょっとだけ安心して、眠くなってきた。

明日は…銀さんを探しに行こう…やっぱり万事屋を諦められないよっ…

もう1回、神楽ちゃんの手をギュっと握って、眠りについた…