冬の夜の夢



大晦日から数日経ちました。
僕…沖田さんに告白しちゃったんだ…僕達やっと…恋人同士になれたんだ!!
えっ…えっちな事もしちゃったし…なんか夢みたいだけど、コレって現実なんだよね…?嘘じゃないよね…?
沖田さんは流石にお正月は忙しいらしくって、電話をくれたり逢いに来てくれたりはしてないけど…
それどころか、ちらっと見かける沖田さんはものっ凄く忙しそうに走り回ってるし…

でもきっともう少しして非番になったら逢いに来てくれるよね?
今度こそ、デート…しちゃったり出来るよね?電話するって言ってたもんね!

油断するとニヤニヤしちゃう顔を引き締めてはみるけど、いつの間にか緩んじゃう。
姉上や銀さんや神楽ちゃんに気持ち悪い、とか言われるけど…しょうがないよね!嬉しいんだもん!!
一番初めに、銀さんにその事を報告する。
記憶喪失の時の事がちょっと引っかかったけど…でも、記憶戻ったし!…大丈夫だよね………?

「銀さん…僕…やっと沖田さんに告白出来ました…!沖田さんと…お付き合いしますっ!!」

僕がなんとかそう言い切ると、ニヤリと笑った銀さんがくしゃりと僕の頭を撫でる。

「良かったな、新八。沖田君喜んだだろ?」

「…はいっ!」

「お~お~、真っ赤な顔しちゃって。でも、新八はまだまだ子供なんだから、エッチな事なんてしちゃだめだよ~?よし、沖田君にも釘刺してこよ。」

「ちょっ…銀さんっ!恥ずかしいんで止めて下さいぃぃぃぃぃ~!」

さっそく立ちあがって、どこかへ行こうとするんで着物の袖を掴んで止めると、にやぁり、と笑う。

「何で恥ずかしいの?お兄さんは弟分の身を案じてだな…ってか、何されるか分かってるんだ、新八く~ん?」

「そっ…そんなのっ…ちゅうとか…ですよね!?僕だって健康な男子なんですから!それぐらい…」

「へぇ~?お、新八君、ココに何か付いてるよ~?」

「へ?」

銀さんが僕の首筋をするっと撫でる…って…えぇっ!?
慌てて首を押さえると、銀さんが、うっそ~、と言って、くくっと笑う。

「何だ新八く~ん、もう手遅れ?エッチな事されちゃった?」

「そっ…そんな事有りませんっ!そんなっ…事っ…」

あぁぁぁぁ…顔に血が…ものっ凄い上ってきちゃったよっ…

ちろりと銀さんを見上げると、今まで見た事無い位優しい顔で僕を見てる。
そしてもう1回くしゃり、と僕の頭を撫でて、にこりと笑う。

「どんだけ赤くなるんだよ、お前…もうからかわね~から安心しろ?幸せにして貰えよ?沖田君が浮気なんかしたら、すぐに銀さんに言うんだぞ?ボッコボコにしてやんよ。」

「…有難う御座います…」

僕がお礼を言うと、ボリボリと頭をかいて、あ~、と言う。

何…?

「神楽の事は…どうすんだ…?」

そう…神楽ちゃん…あの娘を泣かせたり、悲しい顔は見たくないけど…でも…

「神楽ちゃんにも…報告します…」

「…そうか…」

銀さんが複雑な顔をする。
でも僕は…沖田さんが好きなんだ…


少しして、定春と遊びに行ってた神楽ちゃんが元気に帰ってくる。
すぐにソファにごろん、と寝転がると、銀さんが立ちあがってどこかへ行ってしまった…

今…って事だよね…
僕は覚悟を決めて、ソファにゴロゴロしている神楽ちゃんに話しかける。

「…神楽ちゃん…ちょっと良い…?」

「お手伝いならしないアルー!正月はゴロゴロするって決めてるネ!」

「イヤ、神楽ちゃんいつもゴロゴロしてるからっ!…って、お手伝いじゃ、無いんだ…」

僕がそう言うと、ちろりと僕を見た神楽ちゃんが、起き上がる。

「…何ネ…」

僕の覚悟が伝わったのか、神楽ちゃんも真面目な顔で僕に向き合う。
ごめん…ごめんね、神楽ちゃん…

「あのね…?僕…大好きな人に告白したんだ…僕ね…沖田さんと恋人同士になったんだ…」

ちゃんと神楽ちゃんの目を見てはっきりとそう言うと、ぐっと目を見開いた神楽ちゃんが、俯く…

「新八…ドSの事…好きだったアルカ…?」

「…うん…」

「恋人に…なったアルカ…?」

「…うん…ごめ…」

「謝るなヨ!!」

僕が言いかけると、俯いたままの神楽ちゃんが叫ぶ。
その足元に、ポタリポタリと雫が落ちる…
僕は…神楽ちゃんを泣かせたく無かった…

「…こんな僕を好きだって言ってくれて有難う…僕は…きっとずっと沖田さんの事が好きだったんだ。女性と間違えてて…それが男だって分かってからも…本当はきっとずっと…」

神楽ちゃんの足が、濡れた床を擦る。
それでも又、ぽたりぽたりと床に雫が落ちる…

「それなのに、認めたくなくて…嫌いだなんて言って…皆に期待させて…はっきりしなくて…それなのに、そんな僕に皆は…神楽ちゃんは優しくて…好きだって言ってくれて…有難う…」

僕がそこまで言うと、ぐいっと目元をぬぐった神楽ちゃんが、顔を上げて笑う。

「新八、こんなイイ女をフッたネ!後悔しても、もう遅いからナ!」

「…うん…きっと後悔するけど…でも僕は前に進むよ…沖田さんと…前に進むから…」

顔を上げて笑って言うと、神楽ちゃんも、ぐしゃりと笑う。

「チクショウ!ドSを一発ぶん殴ってくるアル!」

神楽ちゃんが定春を呼んで、一緒に走って万事屋を出て行ってしまう。

ごめんね、沖田さん…神楽ちゃんに一発殴られて下さい。
僕がちゃんと手当てするから…だから、早く逢いに来て下さいね…?