猫耳なんて…
皆でカブト狩りに行った日からもう1ヵ月。
僕は本気で総悟さんと絶交した。
話しかけられても、腕を掴まれても、抱きしめられても拒絶した。
2週間もしたら、総悟さんは遠くから僕を見つめるようになった。
1ヵ月したら、総悟さんは僕の見える範囲には姿を現さなくなった。
…遂に、呆れられたのかな…
凄く不安になるけど、でも、あんなのは許せない。
皆の見てる前で、なんて…初めてだったのに…イヤ、初めてじゃなくてもそんなのは許せない。
でも、逢えないのはやっぱり寂しくて…哀しくて…
イヤイヤイヤ!ここで許しちゃったら又酷い目にあわされるよ!!
…でも…このままずっと逢わなかったら…別れる事に…なるのかな…
そんなの…そんなの…
そんなある日、頭がぐるぐるになって落ち込んでいる僕を心配して、タカチンや親衛隊の皆がお通ちゃん語りをする為に集まってくれた。
お通ちゃんの話をしているとやっぱり楽しくて、悲しかった気分が少し浮上する。やっぱり僕は、お通ちゃんが一番好きなんだ!
このまま沖田さんとは自然消滅してしまったとしても、僕にはお通ちゃんがいるんだ!
…でも…やっぱりそんなの…
考えただけで、胸が痛い…
結局、僕の考えは元に戻ってしまった。
僕がそんなシリアスな事考えてるっていうのに、帰りの電車内で隊員達が猫耳アイドルの話で盛り上がっている。
猫耳なんてなぁ…猫耳なんてそんな良いもんじゃないんだよ!
キャサリンさん見てみろ!!あんなん全然萌えないからな!!
猫耳なんぞに現をぬかしていた隊員に鼻フックデストロイヤーをお見舞いして、それでもまだ怒りが収まらずに追い打ちをかけようと迫っていくと、ぶっ飛ばした隊員が他のお客さんに当たって…
その人もぶっ飛ばした隊員と一緒に倒れていた…
やっ…ヤバいヤバいヤバい!
怪我とかさせちゃってたら、僕、お縄…?
別の意味で脳内がぐるぐるし始めると、隣からやたらと可愛い声で僕に感謝の言葉が投げかけられる。
…え…?…僕…?
深々と頭を下げられて、バンダナを取ったその頭には…猫耳…
………可愛い娘の猫耳って………猫耳って………無敵だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
次の日になっても、僕の頭の中には昨日の猫耳っ娘の恥ずかしそうに笑った顔がぐるぐるしてて…
僕、どうしたんだ…?
まさかコレ…恋…?
…まぁ…10回に7回は…総悟さんの猫耳姿が…浮かんでるけど…
あの手触りの良い、綺麗な髪と同じ猫耳が付いてる姿なんて…ドキドキなんかして無いからな!!
そんな事を考えながら朝食を頂いていると、よほどボーッとしていたのか心配した姉上が言葉を掛けてくれる。
いけないいけない、しっかりしなくちゃ…
言われた通りに姉上に突っ込みを入れると、卓袱台をひっくり返された…
ぼーっとしたまま万事屋に向かうけど、やっぱり猫耳娘と猫耳総悟さんが頭の中をぐるぐるしてしゃーない。
壁や電柱に頭をぶつけて正気を保とうとしても、そんなの無理で。
なんとか万事屋に着いて、お茶でも飲みながら考えようと思ってたら、居間で銀さんと神楽ちゃんが何かコソコソやっていた。
よーく聞き耳を立ててみると、何かを隠ぺい工作しているようで…
…ケーキ…?
…新八…?
………僕宛の荷物じゃねぇかよ!?
「アンタら何やってんですか!」
机に頭をのめり込ませてやると、あたふたと言い訳を始めるけど…誰からの何の荷物だったんだ?
「ケッ…ケーキ食べただけだから!」
「手紙なんか読んでないアル!!」
セロテープで補修してある手紙を見付けてギロリと睨むと、銀さんと神楽ちゃんがすぐにバレる嘘を吐き始める…
全く…仕方ない人達だよ…
総悟さんから…とかかな…?
急いで手紙を見てみると…
…なっ…!?コレ…!!あの娘から!?
嘘っ!こんな事って有るのか!?
イヤイヤ落ち着け。
確かにお礼がしたいからって、住所と名前を聞かれて万事屋のを教えたけど…
え…!?
まさか本当にお礼くれるなんて…
それに…この手紙…又会いたいって!ちゃんとお礼が言いたいって!!
まさか…まさかとは思うけど…コレってデート…に…なるのか…?
もしかして、僕にも噂の『モテ期(女子限定)』が来た…?
どっ…どどどどどどどうしよう!?
僕にはお通ちゃんが…!
なによりも総悟さんが居るんだ…!
でもアレ、デートって決まった訳じゃないし!
お礼が言いたい、って言われてるだけだし!
それにもしかしたら…偶然彼女と一緒に居る所を総悟さんが見て…なんか仲直りするきっかけに…出来るかもしれないし…
あぁ、そんな事考えるなんて、僕はなんてズルいんだ。
自己嫌悪しつつも、ついついそんな考えになってしまう。
どうしたら良いのか段々分らなくなってきて…でもそんな事、銀さんや神楽ちゃんに相談できる訳無いし…他に…他に…
あれ?僕の周りにそんな事相談できる大人…居ない…し…
愕然としながら、今流行りのネット茶屋に行って、パソコンの中の侍掲示板の方達に相談してみる。
桂さんをはじめ、色んな人が反応してくれたけど…全然役にたたねぇよ!!
って…僕は…自分の事なのに…そんな事まで誰かに相談しないと何も出来ないなんて、情けなくなってくる。
もう1回、自分の気持ちと向き合って、ちゃんと考えようと席を立とうとした時に、パソコンの向こうから檄を飛ばしてくる人が居た。
『銀色の侍』
…この名前…この言葉…
まさか…銀さん!?銀さんなのか!?
ネット茶屋の中でキョロキョロと辺りを見回しても、あの目立つ銀髪は見えないけど…
でも、銀さんは…いつも僕が迷った時には背中を後押ししてくれる。
どうなるかなんて、やってみないと分からないよね…
僕は…彼女と会ってみる事に決めた。
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