サンタクロースの贈り物



今日は、一年で一番カップルが大騒ぎする日、クリスマスイヴ。
本当なら、僕だって大好きな人と一緒に過ごすだろうって思ってたのに…少しだけ楽しみにしてたのに…今となってはもうそれは夢のまた夢だ。

そう想うと、じわりと目が痛くなる。
一方的に別れを告げられてから結構時間も経ったから、もう大丈夫だって思ってたのに…あの人の事を想うとやっぱりまだ涙が滲んできてしまう。

僕ってこんなにしつこかったのかなぁ…
まだあの人の事が好きで仕方ない。

沖田さんは…元気にしているんだろうか…?凄く心配だよ。
だって、あの時沖田さんは凄く落ち込んでいたから。
その後からは、一度も逢えていないから…
ううん、見かけてすらいない。
土方さんや山崎さんは嫌って程見るって言うのに…

近藤さんにさり気なく様子を聞く限りでは、あまり元気では無さそうだけど…でも、振られてしまった僕が何か出来るものでも無い。
元気付けるなんて…出来やしない…
せめて…匿名でクリスマスプレゼントを渡して貰えば良かったかな…
そうしたら、少しは沖田さん元気になったかもしれないもの…

実は、こっそり沖田さんの為に帽子と手袋とマフラーを編んだんだ…きっと似合うと思う、碧い色で…沖田さんの瞳の色で…
渡せるなんて想っては居なかったけど、でも冬の見廻りはきっと寒いから…せめて防寒着で温まったら元気が出ると思うんだ。

サンタクロースみたいに、近藤さんにこっそり枕元に置いてもらおうかな…?
丁度今、姉上をストーキング中で僕と一緒に炬燵に入ってるし…

「…あの…近藤さん…」

「どうした?新八君。」

「実は僕…沖田さんにクリスマスプレゼントを用意してて…近藤さん、僕からだって言わないでこっそり沖田さんの枕元に置いてくれませんか…?サンタさんみたいに…」

僕が決死の覚悟でそう言うと、近藤さんは一瞬嬉しそうに笑ったけど、すぐに顔を引き締めた。

「残念ながら、今晩は…」


「近藤さんは私のサンタなのよ?新ちゃんは新ちゃんのサンタとイチャイチャしたら良いじゃない。」

うふふ、と笑いながら姉上が近藤さんの腕に掴まる。

え…えぇぇぇぇ!?

最近この二人ちょっと仲が良いとは思ってたけど…
まさかそんな事になってたのォォォ!?
うっ…嘘でしょォォォ!?

「姉上ぇぇぇっ!?」

「そうじゃなかったら、良い子は早く寝なさいね。私は今夜は稼ぎまくるから帰らないから。」

そう言い放って、近藤さんの腕を捕まえたまま姉上は出勤して行った。


…そうか…姉上今夜近藤さんを搾り取るつもりか…



仕方ないので、独りで食事をして独りでテレビを観るけど、やっぱりクリスマスだからかいつも以上に寂しくて。
だからと言って、プレゼントを置きに真選組屯所に行くなんて勇気は僕には無い。
たとえ勇気が有ったとしても、沖田さんまで辿りつける自信が僕には無い。
絶対、土方さんと山崎さんに邪魔されるに決まっているもの。
下手したら、沖田さんへのプレゼントもどちらかの手に渡ってしまうかもしれない。
そんなの絶対嫌だ。

どうにもできないから…もう寝てしまおう。
まだ早い時間だけど、僕は布団に潜り込んだ。
そうしたら、その暖かさに自然と瞼が降りてくる。

…恋人と過ごすクリスマス…送ってみたかったな…
きっと沖田さんの事だから無茶するんだろうけど、きっと大騒ぎで、楽しくて幸せだったに違いない。
そう想いを馳せると、少しだけ涙が零れた。


ガタッ…


突然、物音と共に自室の襖の前に人の気配を感じる。

え…?
なっ…誰…だろ…

山崎さん…なら物音なんて立てない。
きっと土方さんも。

だとすると…泥棒…?

イヤイヤイヤ、この強化された要塞に泥棒風情が入り込んで来られる訳が無い。

…それじゃ…

まさか…沖田さん…?
僕に…逢いに来てくれた…のか…?

そーっと布団の隙間から外を見ると、そこに居たのは近藤さんと…姉上…?

二人で何か大きな白い袋を持って…ってあの袋なんか動いてる!?

あ、姉上が殴ったら動かなくなった…え…?中身何!?考えたくないよっ!!

恐くなって僕が気配を消して寝たふりをしていると、二人はドサリとその袋を僕の枕元に置いて、そーっと部屋を出て行った。


え!?ちょ…恐いよっ!!
何置いて行ったんだよあの人達っ!?


そーっと布団から顔を出して見てみると、その袋はかなりの大きさが有って…
恐っ!何入ってんだコレっ!?
その上、さっきまで動いてたし…動かなくなったってのがより一層恐いな…
こんなの人1人入ってそうな大きさだし……人……?

サンタクロースのプレゼントは…きっと一番欲しい物…だけど…まさかね………

すごく恐かったけど、近藤さんと姉上が僕に酷い事はしない…と思う。
だから僕は、勇気を出してその袋を開けてみる事にした。

そーっとリボンをほどいて袋の口を開けるとそこには………

「…沖田さん…」

姉上に殴られて気絶した、寝間着姿の沖田さんが詰め込まれていた。