隊長!らぶらぶしてネクロマンサー♪



草木も眠る丑三つ時。
薄暗い部屋を照らす、揺れる蝋燭の炎が浮かび上がらせる影は、4つ。
ゆらり、ゆらりと揺れるソレは身を寄せ合い、ボソボソと聞こえる声は意味を掴めるほど大きくも無い。

「計画は以上だ。」

「皆、上手くやって下さいね。」

「お任せ下さい!」

「勿論!隊長にはいつも応援して貰ってるし、元気無いの気になってたんだっふんだ!」

それぞれの想う所は違うけれど、それでも大切な人の笑顔が見たいから。
勇者たちはソレを取り戻すために立ち上がったのだった。



「あれれ〜みんな元気がないぞォ」

…俺は真面目に仕事してただけだってェのに…
ちょっと店壊したぐれェで世間様はガタガタと騒ぎやがる。
そのせいでイメージダウンした真選組のイメージアップ大作戦と銘打って近藤さんが呼んだのは…

「こんにちわ〜真選組一日局長を務めさせて頂くことになりました寺門通で〜す」

…新八くんが大好きなアイドルだった。

まーた近藤さんが姐さんと手を組んで俺と新八くんの仲をなんとかしようと(友情的なイミで)してんだろうけど…
いかな新八くんだってそんな手には釣られねェだろィ。だって見渡す限り、アノ目立つ法被は見当たらねェもん。

…やっぱ、あんな指輪、気持ち悪ィって思われてんだろうな…
イヤ、もしかしたら俺が帽子やマフラーしてんの見て
『キモっ!どんだけ未練たらしいんだアイツ!』
とか思われてたり…あ、ヤベ、想像しただけで泣きそうになってきた…

それなのに、そんな俺に全く気付かない近藤さんが、俺と土方さんで寺門さんを接待しろと言ってきた。
真選組が誇るイケメントップ2なんだから、お前らがおもてなししろ!とか無理難題をふっかけてくるし…
知るかィそんなん。モテ男の土方さんにでもやらしとけよ。
俺ァ女が喜ぶ事なんざ知らねェし!

…でも、近藤さんに言われた事を俺が断れる訳も無く、寺門さんの脇に控えてる。
ま、俺ァ事務的な事だけやっときゃ後は土方さんが上手くやってくれんだろィ。

「あー、寺門さん。悪ぃんだが後でサイン1枚書いちゃもらえねぇか?『新八君へ』って入れてくれ。」

…土方ァ…鬼の副長ともあろうもんが職権乱用たァ情けねェ!
ってか、土方まだ新八くんの事諦めてなかったのかよ…イヤ、今だから隙狙ってんのか…
新八くんの為にサイン貰うなんざ思いつかなかったぜ、不覚でィ。
今更俺も、だなんて格好悪くて出来ねェし…それに直接渡しに行くなんて…今の俺に出来る訳が無い。

「隊長さんは?『愛しの新八くんへ』で良いよねこのうんこメッサクサイ?」


「は?」


語尾で騙されそうになりやしたが、今寺門さん、とんでもねェ事言わなかったか…?

「寺門さん今…」

「おー!お通ちゃん今度はこっちで…」

にこにこ笑った近藤さんが寺門さんを連れて行く。
まさか…近藤さんが寺門さんにまで…?


その後は寺門さんの横には近藤さんがつきっきりでその事を問いただす事は出来ねェし。
クソイラつく語尾付けて喋んなきゃなんねェし。

ものっ凄くムカつく…

その上寺門さんが可愛いマスコットキャラが必要だとか言って『誠ちゃん』てェ不気味なケンタウロスを連れて来た。

…やっぱ俺には寺門さんの良さは判んねェよ新八くん…こんなトコも駄目なんですかねィ…俺ァ…


そんな暗い気分のまま、可愛い語尾を付けて土方さんに死ねを連呼しつつ一日局長を先頭に見廻りをしてっと、いつの間にか半分になってた誠ちゃんが近藤さんを襲った。

…この声は…?

俺が確かめようと近付くと、寺門さんが下校途中の子供達を見付けて誠ちゃんを呼んで…辺りは阿鼻叫喚となった。

そして、やっぱり誠ちゃんの中からは新八くんが出て来て…
新八くん…こんな近くで見たなァ久し振りでィ…でも俺ァ…



こんな夢みたいな事って有るんだろうか?

お通ちゃんが持ってきてくれた依頼は『真選組のマスコットキャラ・誠ちゃんになってお通ちゃんと1日行動を共にする』というもので…
もう僕死ぬんじゃないだろうか?と思うようなものだった。

だってお通ちゃんだよ!?お通ちゃん!!
そりゃぁ昔、お父様関係の事件で依頼を受けた事は有るけど…
でも!お通ちゃんはもうすっかり遠い存在になっちゃってるし…トップアイドルだし…まさか万事屋に依頼をくれるなんて信じられないじゃないか!
それも、真選組のイベントだなんて…
沖田さんに逢えるだなんて…
嬉しくって嬉しくって、天にも昇る気持ちだった。

でも…僕が顔を出して沖田さんを不快にさせてしまうと思うと不安で仕方ない。
だから僕は誠ちゃんの馬の部分に隠れてそっとお通ちゃんと沖田さんを見つめていた。

それなのに近藤さんがあんまりお通ちゃんといちゃつくから…
我慢出来なくて僕は近藤さんに絡んでしまった。
その上、お通ちゃんに呼ばれるまま下校途中の子供達にアピールしようとして失敗して…僕らは現行犯逮捕されてしまった。

パトカーの中で取り調べするのは近藤さんと土方さんで。
お通ちゃんも沖田さんも居ない上、近藤さんはなんか失礼だしストーカーだし、もう最悪だ!
…まぁ、土方さんがこっそりお通ちゃんのサインくれたけど…なんでちゃんと『新八君へ』って入ってるのかは考えないようにしようと思う。

更に最悪な事は続いて。
こんだけ真選組が居るっていうのにお通ちゃんがテロリストに攫われてしまったんだ!

どうしてくれんだよ真選組ィィィ!絶対絶対絶対!無事に取り戻せよコンチクショウ!!

僕らも一緒に現場に着くと、にくったらしい顔をしたテロリスト達が気安くお通ちゃんに触っていやがるゥゥゥ!?
許さん…許さんぞアイツラ…僕自らがギッタンギッタンにしてやる!!