「新八には旦那やチャイナとの思い出が沢山あるだろィ?」

「そうですね……一緒に居る時間も長いし」

「さっきだって旦那達と行った海の事思い出してただろィ?」

「あ、はい」


海に連れて来られる前、確かに自分は思い出していた。

そして思い出す。

その時から沖田の様子が変になった。


「旦那達との思い出が、俺とのヤツより多いって思っちまって……悔しかったんでさァ」

「!?」


新八は目を見開いた。


「だから、俺との思い出を、旦那達との思い出が薄れる位強烈なモンにしたかったんでさァ」


沖田は一息で吐き出すように言った。その耳は赤く染まっている。


「……………ふ、」


新八は口を緩めた。


「もしかして、いきなり海に連れて来たのは、印象を強くするため、ですか?」


問えば、上下に動く首。


「ビックリした方が強烈な印象が残るだろィ?」

「楽しかった?、て何度も聞いたのは?」

「楽しい思い出が残った方が良いでさァ……」


言われて、新八は我慢出来ないという様に吹き出した。


「ふ、あはははは!」

「な、なんでィ!!」

「無茶苦茶な事しますよねアンタ……フフ、馬鹿みたい」


笑う新八に、沖田は口を尖らせる。

そんな様子を気にする事なく、新八は海の方へと歩き出す。


「馬鹿みたい、ていうか馬鹿ですねー」

「さっきから何なんで、…!?」


怒る様に口を開いた沖田の言葉を遮ったのは海水。


バシャリと、新八が沖田に水をかけた。


「何、すんでさァ……」

「馬鹿な事ばっかり言ってるからですよ」

「さっきから馬鹿馬鹿って……」

「拗ねないで下さい」


バシャ!


「うわまた!」


再び沖田に水をかけた後、新八は笑った。


「僕、たとえ沖田さんとの思い出が強烈でも、銀さん達との思い出を薄くしたりしませんよ。僕にとっては大切な思い出だから」

「……、」


バシャッ!


「人の話は最後まできちんと聞いて下さい。口尖らせないの」


既に水に濡れてしまった隊服を感じたまま、沖田は話を聞く体勢をとる。

新八は優しく微笑んで、続きを告げた。


「僕にとっては沖田さんとの思い出も、銀さん達との思い出も、変わらない位大切なんです」

「思い出の量も、強烈な度合いも関係ない」


言い切られた。


(でも、)


沖田は内心呟く。


(新八の言葉は理解してても、やっぱ、なァ)

(好きな奴の中には、俺が一番大きく存在していたいんでィ)


「……、」


きちんと納得してない様子の沖田を見て、新八は苦笑する。


「仕方のない人、だなぁ」


言って、沖田へと近付く。